9.明るい。 ページ33
日付は変わり、土曜日。
今日は祝日だが相変わらず出張で家を空けている両親は家には居らず、二階建ての一軒家である家の中は広いのに不思議なくらいに静かだった。
朝ご飯を自分で用意して、焼いたトーストを食べながらぼーっとテレビを眺めていると、不意に家の近くの風景が映し出された。
「(……あ、ここ、この前オープンした駅前のタピオカ店か)」
随分と近い場所で撮影があったんだな、と思いながら淹れた珈琲に口を付けて画面を眺めていると、何だか店の中に見覚えのある姿が一瞬映った気がした。
気の所為？
……ううん、違う。気の所為な訳ない。
そこに一瞬ではあるが映ったのは目立つ赤髪と随分と可愛らしい顔立ちの女の子で、2人は向かい合い楽しそうにしていた。
彼をずっと遠くから見てきた私が見間違えるはずもない。やっぱり、遊びだったんだ。なんで付き合ってとか言ったの。ぐるぐるとそんな言葉が脳内で回り始めた。
ねぇ、坂田くん、なんで。
知ってたけど、分かってたけど、でも胸が痛かった。チクチクと無数の針を心臓に撃ち込まれたみたいに胸の辺りが痛んで、徐々に心拍も早くなっていく。いたい、いたい、胸が、痛い。
頭の中に響くように、やけに心臓の鼓動が大きく聞こえる。全身が震えだしているのかと錯覚するほどだった。
「……分かってたのに、な」
やっぱり遊びというよりかは、坂田くんのあの行動はセンラくんへの当てつけだろう。2人に何の因縁があるのか知らないけど、私を巻き込まないで欲しい。
ほんとに、巻き込まないで、欲しかった。
せっかくぐっすり眠れたおかげで気持ちの整理が着いてきたのに、やっぱり私の心は振り回されてばっかりで、再び体を床へと突っ伏すほど疲れ果ててしまったようだ。
萎えた気持ちを立て直すのは難しい。
でも、見て見ぬふりもできなくて、やっぱり間違いだったんじゃないかと自分を納得させたくて目を凝らしてテレビを見つめるけれど、その画面に先程の2人が映ることはなくて、残ったのは私の中の醜い感情だけだった。
確証はないけど、やっぱりあれは坂田くんだったと思う。私はずっと彼を見てきたから間違えるわけが無い。坂田くんならすぐに見つけられる。体育でどこにいても、教室の隅でふざけてても、どこでも見つけられる。
だから、やっぱりあれは間違いないんだ。
「(……もう、好きなのかどうかも分からなくなっちゃった……)」
昨日までは届いた距離が、今はとても遠く感じる。
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……！いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜！今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです！ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……！その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました！ (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです！更新楽しみにしています…！ (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時：2023年6月8日 21時
