8.もうひとつ。 ページ31
一休みする為に横になっていただけなのに、いつの間にか眠っていたらしい。
壁に掛けられたシンプルなデザインのデジタル時計を見ればあれから1時間も経っていたらしく、時刻は1時を過ぎていた。そうか、もうお昼か……通りでお腹が空いている訳だ。
ぼやっとした頭でそんな事を考えながら、水を含んだように重たい体に鞭を打って、無理矢理上半身起こす。相変わらず体中が痛い。重たすぎる体のせいで、肩になにか乗っているような気さえした。悪霊にでも取り憑かれてるのかな。
と言っても、1番痛いのは頭なのだが。でも首も痛いし体の節々も痛むし……いや、首は寝違えたから痛むのかも。
「いたたた……」
あー……うん、やっぱり寝違えたみたい。
首が痛くて痛くて堪らない。もうこのままお昼も食べずに寝てしまおうか、なんてうっすらと思い始めてしまったが、こんなんじゃダメだ。
また栄養バランスが乱れて倒れてしまうかもしれない。体調を保つのに1番大切なのは規則正しい生活だからね。
「う……っ、やっぱり痛いや……」
もしかしたら初めて寝違えたかもしれない。人生を歩み始めてもう十何年と経つが、疲れて寝込んでそれでもって首を痛めた事は今までもなかったから、慣れないせいで余計に痛く感じる。
第一そんなドジ、普段の私ならやらない。
人に慰めを求めると嫌われやすいからって、弱みはなるべく作らないようにしているのだ。これは昔から変わらない。
まぁでも、今日はさすがの私も辛かったから仕方ないのかもしれない。
「(なんか、気持ちぐっちゃぐちゃに掻き混ぜられたみたいだったな……)」
真夏に咲く向日葵が太陽を見つめる理由が分かる程、綺麗な笑顔をしていた坂田くん。そして、それを影に咲く名も知られていない花のようにこっそりと見つめていた私。
何を夢みてしまったのか、進展したいと望んで願掛けに縋った私がいけなかったのは分かっている。
けど、けれど、酷いじゃないか。
自分と違って下心のない笑顔を見せる坂田くんが好きだったんだ。私が好きだったのは、あの濁ったような瞳で微笑みを浮かべる彼じゃない。
なんの悪戯なの?
神様は、何を思って私にこんな事をしたのだろう。そもそもセンラくんは本気でも、坂田くんが私に対して「付き合おう」と言った言葉は本気とも取れるし遊びとも取れた。
今までそんな不吉な噂を聞いたことがなかったから油断していたのかもしれないが、もしかしたら坂田くんはかなりの遊び人で私で遊ぶつもりなのかもしれないし……
「(……もう、なんにも分からんないや……)」
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時