7.君は俺のもの。 ページ27
「……やっぱりなんかあったんや」
「っ、」
「A、嘘ついたのも全部許す……だから、本当のこと言うて。坂田になにされたん?」
近くで感じるセンラくんの息遣いに、ドクンと心臓が大袈裟な音を立てて鼓動を早めた。
至近距離で私を見つめる鋭くて、でもどこか悲しそうな瞳に思考が削り取られる。言い訳しようという考えはすぐにどこかへ飛んで行ってしまった。
……逆らっちゃ、いけない。
この人には、従わなくちゃいけない。本能がそう言った気がして、私は手元のシーツをきつく握り締めて何を答えればいいのか、と迷って混乱して、結局なにもできずに震える口を開いた。
「……き、キス、された」
「それだけじゃないやろ」
「っ……舌、入れられて……首の、とこ、いっぱい痕付けられた、」
「……抵抗した?」
センラくんが何故その質問を私に寄越したのかは分からないけれど、彼はその蜂蜜色の瞳をぐらぐらと揺らして私にそう聞いてきた。
どうして、そんな顔するの?
私が小さく、分かんない……と答えると、彼は「そっか」とだけ呟いてから私の力んでいた片手を握って自分の方へと抱き寄せた。片手はシーツに手を着いたまま、恋人繋ぎの形に繋がれて、密着した体同士で鼓動を伝え合う。
「……A、だめやで、いやや……」
「せ、せんらく」
「そんなん俺、嫌やもん……許さへんもん……Aは坂田が好きでも、俺はおまえが好きやねん……なんでアイツが入ってくるん?……なんで、いっつもアイツが取ってくん……」
「待ってセンラくん、何言ってるのか分かんないよ。ねぇ、お願い。離して」
「はは……Aは俺のこと嫌いやもんな。知ってんねんて、それでも手に入れたいって思って何が悪いんや」
1人呟くようにそう言うと、彼は優しく私と唇を重ねた。
触れるだけの優しいキスは、私が拒絶しようとすれば出来たはずだった。なのに焦ったように揺らんでいた瞳の意味に気づいてしまった私は彼に対して同情心を抱いた。だから、拒絶しなかった。
手の力と、強ばっていた肩の力を抜いて瞳を閉じる。すると、薄く開いた視界の先でセンラくんが動揺したように肩を揺らしたのが見えた。
……自分へ向けられる独占欲が、こんなにも心地いいものだなんて知らなかった。
本当は、元々心のどこかで気づいていたのかもしれない。もしかしたら、遊ばれてる訳じゃないのかもって。センラくんは本気で私の事が好きなのかもって。
「(……ここで拒絶しないとか、私って最低な奴だな……)」
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時