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先生の言葉に「え」と抜けたような声が出た。
だって私を運んでくれたのは先生とか、きっとその辺だと思ってたから。なのに坂田くんが、1番早くに私を助けようと動いてくれたんだ……。
なんだか胸がザワザワする。キュンと縮まるように心臓が痛んだ。それで、あ、恋してるなって思った。あんな事されても、好きだ。どうしようもなく、彼のことが大好きなのだ。遊びでも、坂田くんになら何されてもいいかもしれない。
なんて、単純な私はそんな事を思った。
「坂田くんが言ってた彼女って、あなたのことだったのね。大切にされてて羨ましいわぁ」
「っ？！か、彼女じゃないです！」
「ふふ、恥ずかしがらなくてもいいのよー？」
「っ、恥ずかしがってないです！本当に違うんです！！」
変なことを言う先生に、ここだけは譲れないと意地を張って声を張り上げていると、急に保健室のドアが開いた音がした。それに釣られるようにして扉の方へと目を向けると、見覚えのある人物がこちらへと歩いてきたのが見えた。
目を見開いて、自分の瞳に映った怠そうにしている金髪の彼の名を呟く。
「センラ、くん……」
「おー、Aやん。Aもサボり？」
「そんな訳ないでしょ……」
「せやんなぁ、A真面目やもんな。……なぁ先生、ちょっとだけA借りていい？」
「あらあら。でもその子今日体調悪いの。だから、先生が少しだけ保健室開けてあげるわね」
「え、ちょ、せんせ」
何を勘違いしているのか、変な風に空気を読んだらしく楽しそうに微笑みながら「じゃあ珈琲飲み終わったら戻ってくるね」と言っていなくなってしまった先生。
いやいや、私の他にも体調悪くて保健室来る人いるかもしれないじゃないですか！！
なんて、心の中で訴え掛けてその場から逃げたい思いを抱えていると、センラくんがにっこりと笑って私の座っているベッドの端に腰掛けた。
ひいっ、笑顔が威圧的すぎる……！！
「……んで？坂田に何されたん？」
「……センラくん、今日仮病つかって休むんじゃなかったの？」
「話逸らさんでよ。答えんならペナルティやから」
「ぅ……、た、ただ……保健室に連れてってもらっただけ、だよ……」
じっと頭から足の爪先まで見られて、私は恥ずかしくなって俯いた。しかし暫くしてからただ一言「ふーん……」と、聞いたくせにさも興味もないような声を出したセンラくん。
そして、次にスプリングが鳴ったかと思うと近くで彼の吐息を感じた。気づくと、センラくんが私の顔を覗き込んでいた。
近づけられた綺麗な顔に、ぐっと息が詰まる。
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時：2023年6月8日 21時
