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放心状態になった私は、シャツのボタンを容赦なく外し、その露出させた首筋や鎖骨に吸い付いて痕を残す坂田くんにすら反応できなかった。
ちゅ、ちゅ、とリップ音だけが不自然に響くこの部屋は居心地のいいものではないけれど、それでも他人の体温に触れると人間の本能なのか安心してしまうのが本当に嫌だ。
意志に反して動いてくれない身体を彼に好き勝手にされても、最早なにも考えられない。
なら、この胸を締め付ける感情はなに?腰を刺激する甘い響きは?
「キスマ上塗りして挑発してもーた。……まぁセンラなら大丈夫やろ」
「い……っ、」
「あ、ごめん痛かった?だいじょーぶ?」
満足したらしい彼は、それを最後に私のシャツのボタンをきっちり上まで締めた。いつもは私も暑いからって1つ外してるんだけど……でも、キスマは隠してくれるらしい。
やっぱり似てるな、この2人って。
変に律儀な所とか、到底理解できないような闇を持ってる所とか。
なんて感傷に浸るような薄暗い気持ちで考えていると、ガラッと保健室のドアが開く音がして保健室の先生の「あら?」という声が聞こえた。
「誰かいるの〜?」
「あっ、先生やっと来た!Aがなんか頭痛でうずくまってたから連れてきたんです。てか先生遅すぎ!」
「あらごめんなさい。佐伯さん、ね。大丈夫?他に痛むところは?」
その問いに軽く首を横に振る。
すると、うーん、と考えたような仕草を見せた彼女は私の目の下に隈が出来ている事を指摘した。
それから目の下を軽く引っ張って「あー、これ貧血と寝不足ね」と呟いた。
「もしかして、今悩みとかあるんじゃない?」
「え?」
「年頃の女の子って悩みとかで寝不足とか、貧血とかにもなるの。私もよくなってたわ〜」
悩み、か。
心当たりがない訳でもない。実際夜は眠れていないし、気を張ってばかりで疲れているから。
けど、一瞬にして雰囲気が元に戻ってニコニコとした笑顔を絶やさずにいる彼をチラリと覗いても意味がないと思うのだ。
彼は学校全体で見ても有名人で、理系クラスに入ってる時点でお察しの通り、センラくんまでとは行かなくてもかなり頭がいい。私と同じくらいか、それ以上かのレベルの人だ。
しかもルックスまで良くて、有名にならない訳がない。
ふふふ、とうっとりしたように笑う先生は先程から私よりも坂田くんの事を見ているし、私が彼ら2人の事を相談しても苦く笑うだけで終わりだろう。
……まぁ、大人に期待なんてするなって事か。
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時