6.挟まれた愛。 ページ21
重すぎる足取りで通学路を歩く。
更には制服がまるで水を含んだように重く感じられて、更に私の疲労感を増幅させた。朝からセンラくんに会わなかったから良かったものの、切実に学校に行きたくない。
「(……なんで具合悪いから、とか言えなかったんだろう)」
体調が悪いから無理、と言えば変な所できちんとしているセンラくんはきっと私を気遣ってお誘いは取り下げてくれただろうに。
なのに、私は咄嗟に変な言い訳をしてしまった。
そして、その結果がこれである。目眩すらしてきた自分の思考に、痛くなってきた頭を抑えて電信柱に寄りかかる。病は気からというが、憂鬱な日は本当に頭が痛くなるらしい。倦怠感と頭痛が酷い。
時間はまだまだ余裕だし、少し休んで楽になってから学校に行こうかな……そう思って目を閉じた時、上からスっと声が降ってきた。
聞き慣れた、私の大好きな声が。
「佐伯ちゃん大丈夫?!」
「さ、かたくん……?」
「どうしたん?!頭痛いん?!」
「っう……ごめん、大丈夫だから気にしないで」
「っ……気にせんでとか、言わんでよ。こんなの見ちゃったら放っておけへん」
彼の声ははっきりと聞こえるのに、まわりの雑音は頭に響いていて、まるで頭が割れるような激痛に襲われる。
心配をかけたくなくて彼に言葉を返そうとしても、上手く喋れない。
そんなもどかしさと自分の情けなさを考えると、センラくんに対しての自分の失態に近い発言を後悔するしかなかった。
「……Aの意見は聞かんからね。苦しんでる奴放っておくほど臆病じゃないよ、俺」
え……今、私の名前……
なんて驚いて声を出す暇も与えず、彼は私の背と膝裏に腕を回して軽い動作でひょいっと持ち上げた。それは世に言う『お姫様抱っこ』というもので、持ち手が安定したらしい彼は私にニコリと笑い掛けると走り出した。
坂田くんが走っていて不安定に揺れる身体を支える為に、私は悲鳴をあげてぎゅっと袖を握って彼にしがみつく。
待って待って、落ちる……!!
「A、もう少し我慢できるな?」
走りながら器用に私の顔を覗き込んでそう言った坂田くんに顔の距離が近いとかで赤面する暇もなく、あ、と思った。
この顔、見たことある。
だって、紅色の赤い瞳の奥に濁りを宿したこの顔は、センラくんが私に触れる時にする顔と同じだ。
キスして艶っぽく笑って、溶けるんじゃないかって思うくらいとろりとした目で私を見るセンラくんと坂田くんが、どうしてなのか私の中で重なってしまった。
2人は、正反対なんかじゃなかった。
「(似て、る……)」
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時