5.自分が知らない自分。 ページ18
最悪、の一言しかない。
この気持ちを全て洗い流したくて、私は帰ってすぐにお母さんに挨拶もせずにお風呂場に向かった。リビングの方からお母さんの「ちょっとA〜？」という私の名前を呼ぶ声がするけど、今は不思議とどうでもいい。
制服が皺になることも気にせず、ブラウスもスカートも乱暴に脱ぎ捨てて風呂場の冷えたタイルの上に足を踏み入れた。寒さに震えた肌が粟立つ。
好きじゃ、ないのに。
なのに……
「なんで……？」
そう呟きながら風呂場の鏡を見て、私は瞬間的にその鏡を硝子ごと原型がなくなるまで壊したくなった。
自分の項から首筋までの間に付けられたセンラくんの噛み跡が、まだ形が分かるくらいハッキリとそこに残っていた。いつ付けられたのかは分からないが鎖骨の周りにも赤い鬱血痕が見える。その痛々しい様子に、私は思わず鏡に向かってシャワーをかけた。
この跡が、センラくんが残した傷跡が、それで消える訳じゃないのに。すぐに水が流れ落ちてしまった鏡の奥に自分の姿が見える。鏡に張り付いた水滴で表面がぼやけていても首の赤い跡は隠せていなくて、私は思わず泣きそうになった。
今日は厄日か何かなのだろうか？
だって、あのセンラくんに、キスされた。それも無理矢理。
でも、何故か気持ち悪くはなくて、そこまで嫌とも感じなくて、それが尚更私の心を掻き乱した。
あの時の私は嫌、と表面上では確かにそう言ったけれど、喪失感や嫌悪感よりも腰を擽られる妙な感覚に苛まれてしまったのだ。本当は、時間が経つにつれて彼のキスを受け入れてしまっていた。
自分が自分で憎たらしい。
柔らかい唇の感触とか、いつもセンラくんからする香水の匂いとか、私の体を押さえ付ける彼の指の感触とか、全部が全部嫌じゃなかった。好きでもない相手のキスを受けいれてしまうなんて、そんなの……
「(……坂田くんに、嫌われちゃう……)」
坂田くんは、センラくんが言うには大人しい子が好きらしい。私とは違う純粋で清純な子が好きなんだろうな、と想像して苦しくなった。
私なんかとは正反対の、かわいくて女子力が高くて、明るい笑顔の可愛い女の子なんだと思う。私とは全然違う。どうやってもそうなれない。どう頑張っても、きっと私は坂田くんの好きな人にはなれない。
だって、私は臆病なだけで清純でもないし、頭の中は気持ち悪いくらいに坂田くんの事で埋まってる。
こんな私を、誰が愛してくれる？
「死にたい……」
なんて、そんな勇気もないくせに。
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……！いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜！今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです！ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……！その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました！ (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです！更新楽しみにしています…！ (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです！後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時：2023年6月8日 21時
