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その言葉が理解できなくて、私は「え?」と抜けたような声を出した。
センラくんは相変わらずの呆れ顔で、はぁ……と深く溜め息を吐いている。私はただ唖然として彼を見つめるが、やっぱり私にはどういう事なのか分からなくて、困ってしまった。
すると、悶々と頭を悩ませる私の方へ、センラくんが急にぐっと近づいてきた。
「……むしゃくしゃするからキスしたい」
「っは……?!なんでそうなるの?!」
「なんでって、おまえは俺の下僕も同然なんやし別にええやろ。それに、彼女とキスして何が悪いん?」
下僕だのなんだのと言っておいて、こういう時だけ『彼女』という単語を出すのだからタチが悪い。ていうか、脅しで成立したカップルなんて恋人という枠に入れてもいいのか……?
だが、センラくんの無駄に整った顔にじっと見つめられて、私は息を飲んだ。トパーズを散りばめたみたいな綺麗な瞳に吸い込まれるかと思って、1度抵抗する事を躊躇してしまいそうになる。すると油断したその瞬間、突然彼に制服のネクタイをぐっと引っ張られて、私は短い軽い悲鳴をあげて彼の方に倒れ込んだ。
彼の方に不可抗力で抱きついてしまった私を片手で支えながら、センラくんはぐいっと顎を掴んで私の顔を上に向かせると、そのまま強引に口付けてきた。
んん、と身ごたえしてどうにかして離れようと後退るけれど不幸にも背後には壁があって、逆に壁に押し付けられて更に逃げられなくなってしまった。
「っん、ん、は……っ、ぁ……」
「ん、あま……」
唇を割って舌が入ってくる。
思わず体を跳ねさせるが、抵抗する暇もなく自分の舌に彼の舌が吸い付いた。逃げようと引っ込ませても追い打ちをかけるように深くまで舌を差し込まれて、息が苦しくなる。
弱々しく胸元を押し返していた手はいつの間にかキスの息苦しさを耐えるために彼の袖を掴んでいて、完全にセンラくんに体を預けてしまっていた。
力の抜けた私に気づいたのか、軽く体を支えてくれるセンラくんにしがみつく。
「はは……めっちゃえろい顔をしてんな。かわいいわ」
「けほ……っ、けほ……っ」
体を離されて、私はするすると壁を伝って床に座り込んだ。
こ、腰抜けた……!!
「あれ、もしかして腰抜けた?」
「ぅ、うるさい……っ」
「もう、体力ないなぁ……」
肩で息をする私の前にしゃがみ込んだセンラくんは、赤くなった私の頬に触れるとやさしく肌を撫でてきた。
センラくんって撫でるの好きなんだな。なんてどうでもいいことを考えながら、抵抗する気力が残っていなかった私は大人しくしていた。
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時