4.焦りと盗撮。 ページ15
「ち、違うよ。だって私センラくんとは全然話した事ないし……」
「でも、お互い下の名前で呼んどるやん。それって親しいからって事じゃないの?」
それを指摘されてしまえば、もう何も言えない。否定できなかった私はうっ、と声を漏らした。
我ながら嘘をつけないこの性格にはウンザリだ。何か言い訳をしたいのに言葉が出てこない。まさか本当に好きな人にこんな事を聞かれるだなんて、とセンラくんを恨めしく思った。
私の好きな人はセンラくんじゃない。本当に付き合いたいのも、センラくんじゃない。キスをしたいのも、センラくんじゃない。抱きしめて欲しいのも、ぜんぶ、ぜんぶ。なのに、思い浮かぶのはセンラくんが私に触れる姿だけ。
「(……私の好きな人は、貴方なのに……)」
「付き合ってんねやろ?……別に言いふらす気は無いし、隠さんでええのに」
「付き合って、ないよ……」
それに、と言って付け足しを入れると、坂田くんは目を細めて私を見つめた。
私とセンラくんじゃ釣り合わない。そう言った私の言葉に嘘偽りはない。だって、学年でもトップクラスの人気を誇るセンラくんと釣り合うとは端から思ってないからだ。坂田くんにも引けを取らない女子人気。
遊びでも、私は彼らのような太陽に相手にされるような人間ではないのだ。
「そっかぁ……変なこと聞いてごめんな。今のこと忘れて。俺も忘れるから」
「う、ううん!大丈夫!じゃあ私人待たせてるから先に帰るね……!ハンカチありがとう……!」
そう言って、彼を置き去りにして教室を出た。
……坂田くんってあんな顔もするんだ。
人を探るみたいな鋭い視線を感じて、私は言葉に詰まってしまったのだ。あの視線、背に悪寒のようなものすら感じた。なんだったんだろう。
ふと、スマホの画面を見ると時間がかなり経っていて下校する生徒もかなり少なくなっていた。やばい5分以内に終わらせて来いってセンラくんに言われたのにもう10分以上経ってる……!!
「はぁ……っ、はぁ……っせ、センラくん……!」
「……遅かったね」
「ご、ごめんなさい……」
「それは別にええけど……坂田に何もされてへんよね?」
「え?……あ、あぁ、そういえばなんか髪触られた、けど、特になにもなかったよ?」
私は素直に先程のことを答えたというのにセンラくんの口から出たのは「は?」というドスの効いた低い声だった。
つい、肩を揺らして動揺してしまう。
「……他、なんもされてないよな」
「なにもっていうか、坂田くんはそんな事するような人じゃないよ」
「おまえは何も分かってないからや」
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時