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佐伯ちゃんほんまにいい子やなぁ、なんて思いながら誰もいなくなった教室の中で1人黒板を眺める。
今回の席は一番後ろだし、隣もいい子だし大当たりだ。ちなみに余談だが、今回隣になった佐伯ちゃんの事は同じクラスではなかったものの1年の頃から知っていた。
理由は勿論センラ。彼は何故かよく彼女の事を見ていたから。
体育祭の時、文化祭の時、放課後の図書室……今思い返せばかなりの頻度で彼女の事を見つめていたと思う。
でも、昔冗談交じりに「好きなんちゃう?」と聞いたら真顔で否定された為に地雷に近いものだと悟った俺はそれ以降彼女の話題には触れていないけれど、多分まだ好きなんやろな。
さっき、佐伯ちゃんの事「A」って、下の名前で呼び捨てで呼んどったし。
「(……センラが今日できたって言うてた彼女って、佐伯ちゃんの事なんかな)」
……なんか、もやもやする。
このもやもやって俺、佐伯ちゃんにセンラを取られたくないんかな。でも俺に男趣味はないし……じゃあ、俺も佐伯ちゃんの事気になってるのかな?
「あっ、坂田くん……!」
答えは出ないまま、誰かに呼び出されて少しの間居なくなっていた彼女が戻ってきた。
いつもはぴっしりと整えてある髪も制服も少し乱れていて、走ってきてくれんだと思うと何だか嬉しくて、自然と頬が緩んだ。
「佐伯ちゃん!」
「どうしたの?あっ、そうだ、遅れてごめんね。急に呼び出されちゃって」
……やっぱり違うか。
多分、俺が彼女のことをいつの間にか気になって好きになってた訳ではないと思う。でも、やっぱりもやもやする。
「あと、その……渡したいものって……?」
「ん?あぁ、これ。ハンカチなんやけど、大分前に拾ってからずっと渡せてなくて……返すの遅くなってごめんな」
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」
綺麗な笑顔で笑う子だな、と思った。
無意識に、染めている訳じゃないのに茶の混じった彼女の髪を掬い取っていた。センラに悪いと思いながらも触れたいと思ってしまう。
綺麗な子を俺が汚したいと、奥底の欲望が彼女を堕とせと騒ぎ立てる。
「……佐伯ちゃんってさ、センラと付き合っとるん?」
「え?なっ、なんで……?」
明らかに動揺を見せた彼女に、心の奥底で何か黒い靄ような感情がふつふつと湧き上がってきた。
佐伯ちゃん素直だから嘘とか吐けないんや、かわいい。大人しくて素直な子は、サディストな一面があるセンラには恰好の獲物なのだろう。
なるほど、確かにセンラの好きなタイプとドンピシャやわ。
「(……俺も、好きなタイプとドンピシャ……)」
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時