1.好きな人の親友。 ページ1
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私の好きな人は学年の中でも中心に位置する人物だった。
彼の周りにはいつも誰かしら人が居る。だがら多分、彼には人を惹きつける天性の魅力があるのだと思う。
それに魅せられたのは私もそうだし、きっとそうだ。
窓の隙間から吹き込むそよ風で、彼の赤みがかった髪がサラサラと揺れる。友人達と楽しそうに笑っている彼に、私は今日も見とれていた。目が合うはずもないのに、いつか起こるかもしれない奇跡に期待してその姿を眺める。
「(……いいな、私もあの中に入れたら坂田くんと話せるのに……)」
なんて、馬鹿みたいな空想でしかないのに。坂田くんの周りではしゃぐ可愛くて綺麗な、今どきの女の子達を見てそう思ってしまった。影で彼を見つめる事しかできない私とは天と地との差がある彼女達。
羨ましいな、なんて思っては自分が醜く見える。
だから私は、なにもできない弱虫な自分から目を逸らしたくて、視線を彼から本の文面に戻した。
私は彼のように、まるで向日葵みたいに明るくはないから、日陰で咲いてるだけの踏みつけられるのが運命の小さな雑草や花のひとつに過ぎないから……
だからせめて影からでも想わせて。
「(……好きだって、伝えられたらいいのに)」
▽
▽
───────それは昼休みに、図書委員の仕事で本の整理をしている時だった。
不意にキャッキャと楽しそうに恋バナをしているのが聞こえてきて、ちらりと視線を向けると、私のことは見えてないみたいに騒ぐ女子生徒が2人いた。見たことがないから多分後輩だろう。
最初こそ話の内容が筒抜けに聞こえてくるので盗み聞きするのはどうかと思ったが、それは彼女達の声が大き過ぎるせいなので私は悪くないか、とすぐに思い至り気にせずに作業を再開した。彼女らの自業自得だ。
「どうやったら両想いになれるかなぁ……やっぱガンガンアピールするべき?」
「んー……あ、じゃあ私と一緒に両想いになれるおまじないやろ!」
「おまじない〜?えぇ、小学生みたいじゃん」
「いいからいいから!消しゴムに好きな人の名前を書いて、それを誰にも見られずに使い切ると両想いになれるって奴だよ。ね、簡単でしょ?」
「それバレたらめっちゃ恥ずかしい奴じゃ〜ん!」
両想いになれる、おまじない……?
私も坂田くんと両想いになれるかな、なんて呑気な事を考えた私は、彼女達に見えない角度で筆箱から消しゴムを取り出し、油性ペンでその消しゴムに坂田くんの名前を書いた。
今思えば、本当に馬鹿な事をしたと思う。
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白雨(プロフ) - mさん» ごめんなさい気づかなくて返信遅れました(汗) 以前からの読者でしたか……!いつもお世話になっております◎ ありがとうございます〜!今度は最後まできっちり完結させるつもりですので、更新はゆっくりかと思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*´˘`*) (2月12日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - コメント失礼します。以前からこの作品が好きで何度も読み返していたので再掲してくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます。無理のないペースで頑張ってください。更新楽しみに待ってます🫶🏻 (1月11日 2時) (レス) id: ae0456fc9b (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - 貴月さん» 以前の読者さまがいらっしゃったとは、びっくりしました……!その言葉を聞くことが出来て、また書き始めてよかったなと思えました。今度こそ必ず完結させます。また見つけてくださって本当にありがとうございました! (6月23日 21時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
貴月(プロフ) - コメント失礼します。以前からすごく大好きな作品だったので、またこの作品を読むことが出来て本当に嬉しいです!更新楽しみにしています…! (6月21日 16時) (レス) id: 76caf5b15a (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - yumeさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです!後々、セさんの行動の意味や心情も分かるようになってきますので是非今後ともお付き合いください◎ (6月21日 11時) (レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白雨 | 作者ホームページ:疑心暗鬼の中で芽生える執愛。
作成日時:2023年6月8日 21時