・ ページ44
小突かれても軽くだったので痛くもなかったが、私は彼の背後で倒れている目出し帽の男が気になって仕方なかった。
何事もなかったかのように私に話しかけてくるけど、この人さっきの事忘れたのかな?いやそんな訳ないよね?
「君高校生くらいやんな?その年でスマホ没収とか、随分と厳しい親御さんなんやね」
そう言いながら少し離れた場所に停まっていた車に乗るようにと自然な動作で促してきた彼に従って、私は車の中に乗り込んだ。なんだかとても既視感のある状況だ。私数週間前にもこんな事になってたよな。
そんな事を考えながら、私は座席に座る。
どう見ても高級車。絶対汚さないようにしよう、と思いながら慎重に座る場所を選び、それから先程彼が言っていたことに対して否定の言葉を述べる。これだけは否定しなければ。
「携帯取り上げてきたの、親じゃなくて保護者です。全然血繋がってない他人なんで」
「あ、そうなんや。複雑な家庭なんやなぁ」
大して興味もなさそうにそう言うと、彼はスマホを操作して早速119に電話してくれた。適当に僕通行人なんですけどぉ、なんて言って誤魔化していたが、通行人が地下駐車場のこんなとこまで入ってくるわけないだろ。
ツッコミどころ満載の通報になんとなくやきもきしていると、電話を終えた彼が何故か視線をこちらに寄越してきた。
え、なにこわ。なんでそんなこっち見てくんの。
「んで、君これからどうすんの?」
「え?」
「俺君のこと気に入ったし、しばらくの間やったら家出の手伝いしたげるけど。多分やけど、あんま保護者と上手くいってへん感じやろ?」
家出したいなら付き合うよ、という事らしい。
なんちゅー誘い文句だろうと思ったが、うらたから離れたいと思っていたのもまた事実。
「……高校、転校するの手伝ってくれるなら」
「ん?転校したいん?いじめられてるん?」
「デリカシー皆無じゃん……まぁ別に、そういう訳じゃないんですけど、私の保護者が高校で大暴れしたもんだから行きずらいんですよ」
保護者っていうか、私の偽の恋人だけど。でも死んでもあいつを偽とはいえ恋人だとは認めたくなかったので、保護を受けている側として、保護者と呼ばせてもらっている。
なんだかこの人にはあらぬ勘違いをされていそうだが、もうそんなのどうでもいい。
すると、二つ返事で彼はそれを了承してくれた。転校の手続き面倒くさいのに手伝ってくれるんだ。私の家族は何年も病院に入院している母だけしかいないのは学校側も知っているし、この人を親戚だと偽れば意外と簡単に転校手続きできるかも。
698人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
李 雨月(プロフ) - 垣瀬さん» コメントありがとうございます。お仲間ですね〜!私も動物シリーズ大好きです(*´˘`*)♡ 私は初めて聴いた時から書きたくて仕方なかったです……笑。更新頑張りますので今後とも是非お付き合いくださいませ◎ (6月22日 19時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
垣瀬(プロフ) - コメント失礼します!!動物シリーズほんっっと大好きです♡♡この曲のパロも出ないかなーって思ってました!🥺お体に気を付けて更新頑張ってください!🙇 (6月22日 7時) (レス) @page5 id: 644357a4d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白雨 | 作成日時:2023年6月21日 15時