検索窓
今日:44 hit、昨日:76 hit、合計:91,406 hit

ページ39

しばらくしてから目的地に着いて、うらたには元気に手を振って車から追い出してから、私は呑気にクッションを抱えて映画を見ていた。

もう物語は中盤。目まぐるしく移り変わる展開にドキドキとハラハラが続いている。

その緻密に練られたストーリーに、私はかなり没入していた。描かれる風景も、人物の指先から頭のてっぺんまで、全てが綺麗すぎた。そしてそこに命を吹き込んでいる声優さんの、息遣いのひとつすらこの物語に色を与えているようで本当に完成度が高いとしか言いようがない映画だ。

そして感動しすぎて涙が止まらない。

だから私は、外からの騒がしい物音とか、部下の人達が何故か口を開いてなにか喋っているその内容とか、全然気にせずにいた。なんなら上司の前じゃないところでくらい駄弁ってたいよねくらいの気持ちだった。

映画は物語の終盤に差し掛かり、主人公が最も輝くシーンが流れている最中のこと。

突然、外で破裂音に近い銃声のような音が響いた。鼓膜にじんじんとくるような嫌な音だった。ここは地下の駐車場。そこそこ広いその空間に、突如響いた発砲音。驚いて、私は思わず「な、なに……?」と声に出して呟いていた。

思わず窓の外を覗き込む。

すると、柄の悪そうな人たちが少し遠くのところで歩き回っているのが見えた。しかもなにかを探すかのような動きをしている。何故かゾッとした。嫌な予感がする。


「あいつらチャカ持ってやがる」

「まずはあのお嬢さんの身の安全が優先だ、何かあったら俺らがタダじゃすまねぇだろうからな」


とんでもなく物騒な会話が聞こえてきた。

え、やっぱりさっきの銃声だったよね?ていうかここ日本だよね?銃刀法違反だよね?

ぐるぐると回る思考でそんなことを考えたが、現実は全く変わらなくて今も男たちが何かを探してキョロキョロと辺りを探しているのが見える。


「お嬢さん、どうしましょうか。この場に留まるにも、避難するにもどちらも危険な状態です。おそらく目的はお嬢さんですから、奴らはうちの車を探しているのでしょう」


そうやって声を掛けてきたのは、私と同じ年頃の娘がいると話していたおじさんだった。

相変わらず顔はいかついけど部下の方達の中でも特段私に優しいこの人だからこそ、我先にと逃げようとせずに私に手を差し伸べたのだろう。


「これは、内部に裏切り者が居そうですなぁ。うちの車は定期的にナンバーを変えてるんで一昨日から変わってるはずなんですが、奴らナンバーを確認して探し回ってますからね」

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (234 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
698人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

李 雨月(プロフ) - 垣瀬さん» コメントありがとうございます。お仲間ですね〜!私も動物シリーズ大好きです(*´˘`*)♡ 私は初めて聴いた時から書きたくて仕方なかったです……笑。更新頑張りますので今後とも是非お付き合いくださいませ◎ (6月22日 19時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
垣瀬(プロフ) - コメント失礼します!!動物シリーズほんっっと大好きです♡♡この曲のパロも出ないかなーって思ってました!🥺お体に気を付けて更新頑張ってください!🙇 (6月22日 7時) (レス) @page5 id: 644357a4d7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白雨 | 作成日時:2023年6月21日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。