・ ページ38
あれから「しょうがないなぁ」なんて言ってニヤニヤとしているうらたに横抱きにされた私は、同じマンションの住人だと見られる夫婦にガン見されて恥ずかしい思いをしながら車に乗り込んだ。
最悪だ、ほんとに恥ずかしい。
そもそも横抱きにされてる時点で恥ずかしいのにうらたがその状況すらも楽しむように「ねぇなんで顔隠すの？可愛い顔見せてよ」なんて普段絶対に言わないようなことばかり言ってきたので、あいつまじで確信犯だと思う。顔から火が出るかと思った。
「はぁ……行きたくねぇ」
「仕事なんだから行きなよ」
「Aは俺の恋人なんだし、もっと優しくしてくんない？」
「うらたが優しくないから私も無理」
「えー、俺優しいじゃん」
どの口が言ってんだ。
話にならない、と思って車の外を見ると何故か今日は後ろに見知らぬ黒塗りの車がついてきていた。車種がこの車と似てるし、高速道路なのにこんなにぴったりついてくるなんてなんだか怪しい。
そう思って後ろについてくる車を凝視していると、うらたがそれに気づいて口を開いた。
「あぁ、後ろの車気になる？同業者だから心配すんな」
「え、同業者？てことはあれにも危ない人乗ってんの？」
「危ない人って……おまえなぁ」
呆れたようにそう言いながら、うらたは「おまえは知らなくていいんだよ」とだけ零して私の視界を自分の方へと向けさせた。顔を掴まれてうらた以外視界に入らないように強制的にさせられる。
相変わらず自分勝手な奴だ、と思いつつも最早この独占欲に似た行動にも慣れてきてしまった私はその場に落ち着いてしまった。腰にまされる腕も最初は居心地悪かったのに今では何も思わない。
慣れって怖いなぁ、なんてつくづく思う。
「今日は会合があるだけだから十数分で終わると思うけど……遅くなる可能性もあるから、我慢してね。一応暇にならないように映画のDVDとか手配したけど」
「え、まじで！何見よっかなぁ」
「俺このサイコ映画好き」
「はい私は嫌いだから却下。うーん、普通にアニメーション映画でもいっか。これ気になってたし」
早々に決めた私は、車の中に備え付けられた少し大きめのスクリーンに映像が映るのを見て1人喜びながらキャッキャしていた。
場違いなのは分かっているがこれくらい許して欲しい。これくらいしないとここではやっていけないのだ。好き勝手させて欲しい。泣けると話題だった映画だからハンカチかティッシュあとで貰わないとな、と考えつつも気づけば私は画面に夢中になっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 698人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
李 雨月(プロフ) - 垣瀬さん» コメントありがとうございます。お仲間ですね〜！私も動物シリーズ大好きです(*´˘`*)♡ 私は初めて聴いた時から書きたくて仕方なかったです……笑。更新頑張りますので今後とも是非お付き合いくださいませ◎ (6月22日 19時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
垣瀬(プロフ) - コメント失礼します！！動物シリーズほんっっと大好きです♡♡この曲のパロも出ないかなーって思ってました！🥺お体に気を付けて更新頑張ってください！🙇 (6月22日 7時) (レス) @page5 id: 644357a4d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白雨 | 作成日時：2023年6月21日 15時
