3.散りゆく紅葉。 ページ8
最初は公の場で姫抱きにされているのが恥ずかしくてそれどころでは無かった為に全く気づかなかったが、この街は完全におかしかった。
なぜなら、人ならざるものがごく当たり前のように街を歩いているからだ。
一つしか目がない子供に、獣の耳を生やした女性、どう見ても大きさがおかしい蛙、人の形をしていない異形。背が悪寒によって震えて、自分の指先の感覚がなくなってくような錯覚に陥る。なに、これ。不気味で、こわい。だけどそんな奇妙な街の中を、坂田さんは慣れた様子で歩いていくから更に混乱してしまう。
しかし見たこともない光景に怖くなって縮こまる私を気にかけて「怖いなら周りは見んで、俺だけ見とって」と言ってくれた坂田さん。人間がいない街の中を見てしまってから、私はかなり体を強ばらせていた。上手く体が動かせない。そのせいで見ないようにしようとするけど中々上手くいかなくて、視界の端々には街を行く彼らの姿が映った。
だけど、私は不意に違和感を持つ。
あれ……？
異形である彼らは坂田さんが通っていこうとする街の中で、何故か彼が通るための道を空けるために立ち止まってまで端の方へと体を避けていた。まるで坂田さんには近づいてはいけないとでもいうみたいに。だけどそんな彼らの視線は全てこちらを向いており、その突き刺さる視線の多さに私はまた怖くなってしまった。
無意識のうちに唇を噛んで、行き場のなくなった感情を閉じ込めるために握る拳に力を入れる。自分の肩が小刻みに震えているのが分かった。体の底から込み上げてくる恐怖に、気づけば目に涙が滲んでいた。
「おい、Aが怖がっとるやろ」
それは、やけに冷めた声だった。声の主は坂田さんで、歩くのをやめてその場に足を止めた彼は私に向けて微笑んでいたときのあの可愛らしさすら感じさせるにこにこ笑顔を完全に表情から消し去り、冷たい瞳で民衆を見下ろしていた。
すると、その声に従うように「も、申し訳ありません！」というような焦った声があちらこちらで聞こえてきて、周りにいた彼らが一斉に頭を下げていく。刺さっていた視線が消えた。なんだか拍子抜けしてしまった。そこに広がるのは、先程の光景からは想像がつかないような景色だった。
なにこれ。よく分からないけど、もしかして坂田さんってすごく偉い人だったりするの……？
「んじゃ、行くかぁ。あ、Aお腹すいとらん？あそこの店の唐揚げめっちゃ美味いねん」
何事もなかったかのようにそう言いながら再び歩き出した坂田さんは、先程とは打って変わって楽しそうに笑っていた。
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李 雨月(プロフ) - かわいい私が好きさん» その言葉がいただけて字書き冥利に尽きます(照) タイトルもこだわっているので褒めていただけて嬉しいです。コメントありがとうございました〜！ (2022年11月8日 22時) (
レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
かわいい私が好き - 題名だけでドタイプを貫いていたので覗いてみたらもう最高の作品に出会いました👐✨これからも読み続けます😉 (2022年11月4日 20時) (レス) @page12 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - みこさん» 一コメですよ〜！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！コメントありがとうございました◎ (2022年10月17日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
みこ - 一コメ、、、？めっちゃ面白いです！ありがとうございます！更新楽しみに待ってます！ (2022年10月10日 15時) (レス) @page11 id: 3112c05530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作成日時：2022年9月19日 21時
