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コクハク age12 ページ49

私も慌てて後に続く。さっきまでの私と同じように,桧山はまず籠の中や床の上を探した。見えづらいところまで,床に頬をつけて見回している。吸水マットや休憩用のベンチ,体重計や可動式のワゴンまでどかしてみるけれど,やっぱり何処にも鍵はない。結衣「桧山・・・・・・」私の落し物を探すのに,ここまで労力をかけさせてしまうなんて申し訳ない気持ちになってくる。お姉ちゃんと征兄さんに店番任せて,しかもふたりに他のお客さんに事情を話させて尚且つ関係無いのに謝らせて。だけど鍵は見つからない。時間ばかりが過ぎていく。結衣「桧山!」もう一度,私は桧山の名前を呼んだ。もうやめよう。もう鍵は見つからないんだよ。結衣「もういい!もういいから!」桧山「大事なものなんだろ!」怒ったように言い返されて,体がびくっと震えた。途端に桧山はバツの悪そうな顔をして,それから力強い声で私にこう告げた。桧山「・・・・・・いいから,待ってろ」

どれくらい,時間が経ったんだろう。桧山は女湯の中まで入って,まだ探してくれている。でも私はもう,鍵は見つからないんだ,という気持ちになっていた。せめて桧山と一緒に探せたらいいのに,あの時「待ってろ」と言ってくれた桧山の言葉に甘えて,脱衣所の床に座り込んだまま動けなくなってしまった。立てた膝の上に両腕を乗せて,その腕で顔を覆うようにして外の気配をシャットアウトしないと,もう座っていられないくらい私は疲れていた。桧山・・・・・・ごめんね。私のせいで,ごめんなさい。銭湯のお仕事の邪魔をして,あるかもわからない鍵を探させている。昼間,学校であんな事言っちゃったのに。こんな私の為に全力を尽くしてくれるなんて桧山はすごい。そうだよね,桧山はノートに「死にたい・・・・・・」って書いた誰かの為にでも,一生懸命になれるくらい優しい人なんだ。それに引き換え私って,なんて心が狭いバカな子なんだろう・・・・・・。鍵はもう見つからなくていい。私,桧山にちゃんと謝りたい。桧山が此処へ戻ってきてくれたら・・・・・・。と,その時。私の目の前に人影が立った。そっと顔をあげると,汗なのかお湯なのか,全身びっしょりと濡らして,桧山がそこに立っていた。ぐいっと無言で左手を差し出す視線だけで私にも手を出すように促す。私が慌ててそれに応じると,広げた手の上に,軽い金属音と共に鎖と鍵がこぼれ落ちてきて。

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作者名:赤司蓮華 | 作者ホームページ:蓮華のホームページ?by赤司 そんなものはありませんby黒子 相変わらず息ぴったり!by...  
作成日時:2022年9月23日 20時

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