想 ページ3
学校に到着したので、机の横にお菓子の入ったバッグをかけて椅子に腰をかける。
「Aおはよ」
眠そうに欠伸をして、声をかけてくれたのは前の席の一ノ瀬彼方君。
「おはよ、一ノ瀬君」
彼方君の机の横を見ると、大きい袋の中にラッピングされた可愛らしいお菓子がもう沢山入っていた。
「一ノ瀬ー」
廊下付近からクラスの男子から声をかけられる一ノ瀬君。
一ノ瀬君は「んー」と適当に返事して、廊下に無気力に向かう。
「やっぱ一ノ瀬モテモテだなー」
クラスの何処かからそんな言葉が聞こえてくる。
自分でもわかっていたことだ。
一ノ瀬君は学園の人気者で、学園で一ノ瀬君の事を知らない人なんていない。
そして、とにかく女子にモテる。一週間に告白一回なんて日常茶飯事だ。
席が近いと言うことで仲良くなったが、それさえなければ平々凡々な私と一ノ瀬君は関わることすらなかっただろう。
「ただいま……疲れた」
一ノ瀬君は私の机の上に手を置いて、そこに顔をうめる。
「一ノ瀬君モテるからね」
自分で言ったその言葉に胸がチクチクと痛む。
「Aは誰かにあげないの?」
そんなことを聞いてきて、心がドキッとするが一ノ瀬君のことだ。単純な疑問なのだろう。
「あげるよ〜」
「へー、俺にはくれんの?」
じーっと見つめながら、聞いてくるので少々恥ずかしくなる。
「欲しい?」
「Aからなら欲しい」
そう言うことを無意識に言うのはやめた方がいい。と言ってしまいそうになるが、言葉を飲み込む。
「ありがと」
クスッと笑って、そう答える。
そのあといつも通り一ノ瀬君は私の机の上で寝て、授業が始まったら私が起こした。
いつもなんで私の机の上で寝るんだろう。
疑問を今更ながら持つがどう考えても答えは出ないので、『まぁ、いっか。』と諦める。
つまらない数学の授業に欠伸をしながら、適当に校庭を見下ろした。
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