◆ 五番目の噂 ページ3
＊
「七不思議の五番目？ 知ってるよ！」
昨日の一件から夜が明け、朝を越し、気が付けば学園は放課後を迎えた。
頬に手を当てて、葵は煌びやかな笑顔を見せた。
「本当！？ どっ、どんな噂！？」
「んふふー、寧々ちゃんたらほんとに好きだね」
「えへ……」
「いいよっ、教えてあげる！」
噂好きの葵は五番目についても熟知しているようで、知っている限りのことを話し始めた。
──七不思議五番目、『16時の書庫』
この学園の図書館には、16時にだけ入れる特別な書庫がある。
書庫にあるのは、人の名前がついた本。書かれているのはその人が学園にいる間の記録。
これまで何をしたのか。
これから何をするのか。
過去も未来も、全てが書かれているのです──。
「全ての記録……」
「先のことまで書いてあるなんて、ちょっと気になっちゃうよね。それに自分以外の人の本も読んでみたいかも」
何気ないありふれた談笑の中、寧々は突如目を見開いてハッとする。
昨日出会った、まるでお姫様のような彼女から言われたことを思い出したのだ。
五番の所に行くといい。この言葉から察するに、書庫で花子くんの本を探せということだろう。
「寧々ちゃんはどう？」
「わわ、私は……」
半分上の空状態であった寧々だが、少しテンパりながらも頬を赤らませて呟いた。
「私も他の人の読んでみたいかな……」
「やっぱり！ そうだよね！ 好きな人のことは気になるもんね」
中音域の柔らかい声色は、明るく凛々しかった。小さな鈴のように凛とした声が聴覚を癒してくれるようだ。
「でも……。もし『16時の書庫』に行くなら、気をつけなくちゃダメだよ」
その声は突然、怪談話に相応しく小刻みに震え始めた。
耳元で囁かれた言葉に寧々は目を丸くする。
「書庫には白、黒、赤の3種類の本があってね。白い本には生きてる人の記録が書いてあるの、黒い本はもう死んじゃった人の記録。その2つは大丈夫なんだけど……」
順当に噂について話す葵の言葉に耳を貸しながらも、寧々は不安の汗をかいていた。
「赤い本だけは、絶対に読んじゃいけないんだって」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
