パイプオルガン ページ6
珍しくバイトも休みな土曜日。
図書館からの帰り道、駅までの道をぶらぶらと歩いていたら、見覚えのある顔が見えた。
「銃兎さん?」
「……Aさん」
「どうしたんですか?こんな所で」
「……ちょっとな」
力なくそう呟く銃兎さん。
どうしたんだろう。
声にいつもの張りがない。
それどころかさっきからため息ばかりで、体も少しダルそうに見える。
もしかして、体調が良くないのか?
「銃兎さん、大丈夫ですか? 歩けます?」
「あ? 舐めてんのか……歩けるに、決まってるだろ」
「いや、口わる……人通り多いんだから、気をつけてくださいよ、銃兎さん有名人だし、何より警察なんだし。左馬刻さんに連絡しますから、待っててくださいね」
ふらふら、と頭を揺らす銃兎さんを横目に左馬刻さんへと電話を掛ける。
数コールの後、もしもしぃ、と左馬刻さんの低い声が響いた。
「左馬刻さん? 今、街でたまたま銃兎さんと会ったんですけど」
『あ? うさポリ公? あいつ、今日は仕事だって言ってなかったか?』
「一応仕事中っぽいんですけど、様子がおかしいんですよ。さっきからボーッとしてるし、足取りも覚束無いし、もしかしたら体調が良くないのかなって……」
『なるほどな。仕方ねぇから、迎えに行ってやるよ。場所は?』
「中央図書館の近くです。駅とうちのカフェとの間ぐらいの」
『あー、だいたい分かった。今から行くから動くんじゃねぇぞ』
「はーい」
返事し終わる前にブチッと電話は切られた。
銃兎さんは、いつの間に移動したのか、少し進んだ先のベンチに座って俯いていた。
「もー、待っててって言ったじゃないですか」
そう声をかけるも、銃兎さんは俯いたままで一切返事はなかった。
「まぁ、座ってる方が楽だろうし……いっか」
左馬刻さんが来るまでまだまだ時間が掛かるだろうし、私も銃兎さんの隣に座って待ってよう。
図書館の前の公園に立つ大きな時計。
針は十七時を指していた。
そうだ、銃兎さんの部下の人達に連絡入れておこう。
「わっ!!」
スマホを見つめていると、突然肩が重くなる。
何事かと思えば、銃兎さんが私の肩にもたれかかっていた。
右肩にじんわりと銃兎さんの熱が広がる。
道行く人々の喧騒の中でも、はっきりと聞こえる銃兎さんの熱を帯びた吐息。
そっと彼の額に手を当ててみると、想像以上に熱かった。
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おたくちゃん - ゴハァ(吐血)最推し...尊い... (2021年5月7日 21時) (レス) id: 210f23da0b (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまうくらい面白かったです。そして、めっちゃドキドキしました(*´ω`)この物語、大好きです! (2021年1月3日 20時) (レス) id: e7a52269e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月斗。 | 作成日時:2020年12月17日 7時