○ ページ29
兎を描いたせいか、隣にあの人を並べたくなって再び棒を動かした。
前髪七三で、メガネで、こう、不敵な笑みを浮かべてる感じ……顔はすぐに浮かぶのに、それを絵にするのは難しい。
頭の中で思う通りに描いてるつもりだが全然上手く描けなかった。
．
「似てないな、銃兎さん」
「あぁ、やっぱりこれ私でしたか」
．
頭上から聞き慣れた声が降ってくる。
「は!? じゅ、銃兎さん!? なんで!?」
突然のご本人登場にベンチから滑り落ちかける。全然気づかなかった。
一体いつから居たんだ……
「この近くで昨日の夜から仕事だったので、ついでに寄ってみたんですが……休みだったんですね」
タバコを咥えながら貼り紙を指す銃兎さん。
今やこの店の常連である銃兎さんが知らなかったと言うことは、もしかしたら店長もギリギリまで休業にするかどうか悩んでいたのかもしれない。
「それで？ Aはここで何してるんですか？」
「あ……えっと、バイトあると思って来たら休みだったから……雪に絵描いて暇を潰してました」
「十八歳の女子高生が雪にお絵描きですか。随分可愛らしい遊びですねぇ」
「う、うるさいですよ!!」
そう言うと、銃兎さんは、ふふ、と笑うだけでそれ以上にも返してこなかった。
彼の方を見上げれば、どこかボーッとした表情でタバコを吸っていた。
そう言えば、昨日の夜から仕事って言ったな。
もしかして、と思ってベンチから立ち上がり銃兎さんの顔をじっと見る。
「……なんですか？」
「銃兎さん、寝てないんですか？」
図星だったのか分かりやすく目を逸らして黙る銃兎さん。
やっぱり、昨日の夜からって言うのは、一晩中って意味だったんだ。
思った通り、銃兎さんの目の下に酷い隈が出来ていた。
「あんまり無理しちゃダメですよ。ほら、ここ座ってください」
「いや、別にこれくらい」
「ダメです。冬場は特に、寝ないと免疫も落ちて風邪ひきやすくなるんですから……暖かい飲み物買ってくるんで待っててくださいね!! あ、あとこれも貸しますから巻いといてください!!」
友達に貰った赤いマフラーを銃兎さんの首に巻き付ける。
手袋が赤いからか、良く似合う。
レディースだから少しサイズは小さいけど、ないよりマシだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おたくちゃん - ｺﾞﾊｧ（吐血）最推し...尊い... (2021年5月7日 21時) (
レス) id: 210f23da0b (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまうくらい面白かったです。そして、めっちゃドキドキしました(*´ω｀)この物語、大好きです！ (2021年1月3日 20時) (レス) id: e7a52269e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月斗。 | 作成日時：2020年12月17日 7時
