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しばらくの沈黙の後、少し離れたところからパトカーのサイレンが聞こえてきた。




「ようやく来たか」そう言って煙草の火を消した彼は裏路地の方へと進み始めた。





あのパトカーが来たら、兄は行ってしまうんだ。





もう二度と会えないかもしれない遠いところへ。




そう思って見つめていると、後ろから「おい」と声をかけられる。




「ボーっとしてんじゃねぇよ。行くぞ」




「えっ……ど、どこに?」



「こんな時間に出歩くの、危ねぇだろが。俺様が家まで送ってってやんよ」




「な、なんで、そんな……」




「まだ近くに仲間がいねぇとも限らねぇからな。それに……テメェの兄のこと、親に説明しねぇとだろ」




「……」




後ろを着いて歩きながら、どう返そうかと悩んでいると「どうした」と顔を覗かれる。



あんまり、人に言いたく無いけど、こんな状況じゃそうも言ってられないよね。





「親は、いません。小さい頃に亡くなりました。二人とも」




そう言うと、一瞬だけ驚いた顔を見せる。




でもすぐに目を逸らして小さく「そうか」と呟いた。




「家には? 誰か居んのかよ」




「……居ません。祖父は病院で寝たきりなので、普段は兄と二人で暮らしてて」




「なら尚更危険じゃねぇか。とりあえず適当な店入んぞ」




そう言って、彼はスタスタと裏路地を進む。



口調は荒っぽいのに、あまりにも行動が優しすぎるせいでちょっと混乱する。



可哀想だと、同情されているせいだろうか。




だけど、どうしてか彼からそんなに感じはしなかった。




そのせいで余計によく分からない。



なぜ優しくしてくれるのか。









「……私は、犯罪者の妹なんですよ?」






気づけば口に出していた。



歩みを止めた彼の姿が裏路地を抜けた街の灯りと重なって揺らめきながら、振り返る。






「んなこと、テメェは何もしてねぇんだから関係ねぇだろ」



ツン、と鼻の奥に痛みが走る。



カメラで夜景を映すみたいに、丸いキラキラが揺れて、心臓がギュ、と痛くなった。








「何か事情あんだろ……話聞いてやるから、早く来いよ」









さっきまでの怒鳴り声とは違う、優しい声色に、兄と同じ「暖かさ」を感じた。







彼の言葉に頷いて、早足で後を付いて行った。





その後入ったお店が、今の私のバイト先。




実はここは、祖父が大昔に縁を切ったという、祖父の弟の経営する店だった。

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おたくちゃん - ゴハァ(吐血)最推し...尊い... (2021年5月7日 21時) (レス) id: 210f23da0b (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまうくらい面白かったです。そして、めっちゃドキドキしました(*´ω`)この物語、大好きです! (2021年1月3日 20時) (レス) id: e7a52269e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月斗。 | 作成日時:2020年12月17日 7時

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