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コンテナヤードを抜けた先、薄暗い路地の奥の人気のない静かな市場。







そこに溜まる薄汚い男たちに、兄はカバンの中身を投げつけた。




まるで獣が仕留めた獲物を食らうように、男たちはカバンの中身――おそらく、違法の『粉袋』に群がった。







それを見て、私ははっきりと理解した。





兄が言っていた、簡単に高額が稼げるバイト。





それが、『運び屋』だと言うことを。兄はその男たちから分厚い封筒を受け取り、再び裏路地へ戻った。





兄以外の人間がいないことを確認して、私は兄に声をかけた。






「お兄ちゃん」





バッ、と振り返った兄の顔は真っ青だった。



私がいるなんて思ってもみなかったのだろう。





震える声で私の名前を呟いて、ドスドスとこっちに迫ってきた。







「お、お兄ちゃ」





「何しに来たんだ!!」




初めて聞く、兄の怒鳴り声。




優しい兄からは想像もつかないような恐ろしい形相で睨まれて、恐怖で涙が滲む。




こんな兄の表情、今まで見た事ない。




「見たんだな!? あいつらのこと!! 俺が何してるかを!!」




兄に手首を掴まれて、路地裏の壁に押し付けられる。



リシンの尖った部分が刺さって痛い。




腕を押さえる力がだんだん強くなって、血が流れ始めた。





掴まれた手首も千切れそうなほど痛い。








「い、たいっ……やめて、おにいちゃ、ん」




「なんで……なんで来たんだよ!! なぁ……お前!!」



兄は、泣きながら拳を上げた。






それが振り下ろされれば、私たち兄妹の縁も絆も愛も、全てが終わる。





もう二度と、戻ることは無くなるだろう。





私はそっと目を閉じた。
















「おい」







時を止めたような、長い長い静寂に響く声。

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おたくちゃん - ゴハァ(吐血)最推し...尊い... (2021年5月7日 21時) (レス) id: 210f23da0b (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまうくらい面白かったです。そして、めっちゃドキドキしました(*´ω`)この物語、大好きです! (2021年1月3日 20時) (レス) id: e7a52269e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月斗。 | 作成日時:2020年12月17日 7時

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