《完結》彼のスーツを脱がす時９【NINO】 (ページ13)

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253.犠牲の裏側ページ13

二宮「結婚前、時代もあるだろうけど既にお腹にいた貴女を産む事をお祖父さんも含め皆反対したらしい…だけど迷わずお母さんは貴女を産む事を選んで勘当同然に家を出たって」

「そんな」

私を産むために

お母さんは

大好きな家族も捨てたってこと？

二宮「お祖父さんはとても後悔していたらしい」

彼の腕を掴む私の手にそっと冷たい手を重ねる二宮さん

二宮「もう一人の孫でもある大野さんは海外思考が強かったからこの店を任せる事は貴女のお母さんの時の事もあって無理強いはしなかったって」

そう本来ならオーナーが継ぐべき場所だって

二宮「洋裁が大好きだったお母さんがいつ戻ってきてもいいために…そして洋裁学校に通っていると知って孫娘である貴女のために遺したかったって」

そしてこの写真もだけど

お祖父ちゃんは私の事をずっと見ていてくれたって

「え？」

二宮「大野さんはお祖父さんの意思を継いで貴女が一人前になるまでこの店を守ってたんだ」

オーナーはいつから知っていたの？

「そんなこと」

テーラーとは普通カッティングから縫製までそれぞれの専門の職人がいる

オーナーはそれを１人でこなすまれなテーラーだ

だからオーナーに初めて会った時も駄目で当たり前だと雇って欲しいとお願いしにいった

でもすんなり受け入れてくれた事に

その時は疑問すら持つ余裕はなかったけど

二宮「大野さんとしても大好きなお祖父さんの店を残しておきたいってのは本心だったみたいだよ」

オーナーはあの時には既に知っていたんだって

ずっと知っていて

私を一人前になるまでに何も言わずにここまでテーラーとして育ててくれた

二宮「お母さんもきっと貴女には言えなかったんだろうね」

堪えきれない涙は溢れだすと一気に頬を濡らす

「私だけが知らなかった…なんて」

海外思考の強かったオーナー…って

私そんな事すら気づかず

二宮「お母さんが家を出た理由を言ったら貴女が傷つくのは目に見えてただろ？」

お母さんもオーナーの大切な時間を犠牲にしてきたって

「私…なんて事を、私のせいでお母さんも…オーナーも」

二宮「違う」

涙を受けとめるように彼は私の両頬を包み

二宮「A？」

視線をそらせないように顔をあげられた

二宮「間違っちゃ駄目だよ」

彼は私が迷わないようにと真剣な眼差しで見つめると

二宮「誰のせいでもない、ただボタンをかけ違えただけ」

優しく慰めるように私を抱き締めた