《完結》彼のスーツを脱がす時９【NINO】 (ページ4)

今日:11 hit、昨日:9 hit、合計:347,911 hit

244.お母さん←10/22 ページ4

「話…」

まさか二人きりになれるなんて思ってなかったから何の準備もない頭

二宮「あるんでしょ？」

でも二宮さんは絶対に答えるまで逃がしてはくれないってわかるから

「はい」

まとまらないままに言葉にした

「日本に戻ったら…母に会って欲しいなって」

二宮さんを見ると彼は優しく笑い

二宮「勿論」

当たり前というような響きの答えに彼にもその考えはあったんだってホッとした

二宮「でも、俺の仕事よりAちゃんの仕事が落ち着いたらAちゃんのお母さんとのスケジュールを見てご挨拶に行くよ」

「ありがとうございます」

二宮「それだけじゃないでしょ？」(笑)

勘のいい二宮さんなら全てをお見通しだったのかもしれない

それは最初から

「はい…二宮さんのご両親には…」

二宮「勿論、会って？」(笑)

変わらない笑顔に言ってくれてよかったって

「はい」

二宮「実はね…貴女の事を話してから母さんがずっと会いたがっててね」

"お母さん"の話をする彼は穏やかな瞳だけど

「お母様が？」

何処か遠くを見ているような

その理由が何処にあるのかなんて考えなくてもわかるけど

二宮「前に少し話したよね」

私の方を向いて真っ直ぐな瞳に彼はその理由を口に出した

二宮「俺の両親は本当の親じゃない」

あの朝聞いた事は忘れる事は１つもない

二宮「本当の母親は俺が10歳の時に亡くなってるし、父親は生きてるかどうかもわからない」

「え？」

二宮「子供の頃は家出程度に思ってたんだ」

彼がどんな幼少期を過ごし

二宮「離婚したわけでもなかったからね」

何れだけ傷ついたか

二宮「でも、母が亡くなっても俺が天涯孤独になってもあの人は俺の前に現れる事はなかったよ」

私にはわかってあげれない

二宮「その事実をあの人は知らないからって夢にもすがった頃もあったけど、そんなの一瞬」

それは私は二宮さんじゃないから

二宮「いつの間にか伯父夫婦との養子縁組が成立してた…」

でも

二宮「その時やっと気づいたんだ…捨てられたんだって」(笑)

そんな事を笑って話す彼の心の拠り所にはなりたいとその手をそっと繋いだ

そして応えるように私の手を握り返してくれた

二宮「伯父夫婦…父さん母さんとも実子がいなかったから俺を本当の子供のように大事に育ててくれた」

伯父様伯母様であるご両親には本当に大切にされたんだって

二宮「いい人達だよ、Aちゃんが不安に思う事は１つもないから安心して」

彼の優しい笑顔に少し救われた