彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ6)

今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:275,434 hit

215.リニューアル←9/29 ページ6

イギリスに行くまでにはそんなに時間もなかった

オーナーとは新店についての打ち合わせ

勿論、新店のコンセプト全てがオーナーの一任ではあるけど現地での小さな確認やオーナーへの伝達等スムーズにこなせるようにと、色々と頭に入れておかなければならない事が山積みだった

二宮さんも当たり前に忙しい日々

それに重ねてイギリスでの私の住まいの手配までしてくれて

彼と離れるのは寂しいけど

私のためにと色々としてくれるのは素直に嬉しかった

大野「Aあとは悪いけどよろしくな」

依頼もうけられる時間がなく、ちょうどいいタイミングだとお店も改装することになり

お店の片付けにも息つく暇もなかった

「はい、生田さんによろしくお伝えください」

オーナーの幼馴染みでもある生地問屋のオーナーである生田さんとはイギリスの新店出店後、ここのお店に卸す生地についての打ち合わせがあるらしく

大野「いってくる」

慌てるようにお店を出たオーナーを見送ると

「いってらっしゃい」

片付けがほぼ終わったお店に一人

何故か寂しさと不安に押しつぶれそうになった

気持ちを切り替えるように段ボールにガムテープをひっぱった時だった

お店のドアが開く音がして

振り返ると

松坂「こんに…ち…は…」

そこには今日会いたいと呼んだ松坂さんが驚いた顔に立っていた

「松坂さん」

松坂「お店…」

「あ、リニューアルすることになって、改装のための引っ越し作業を」

松坂「そういう事だったんですね、驚きました」

「今、お茶いれますのでよかったらかけてお待ちください」

松坂「はい」

「すみません、お忙しいのに無理を言ってしまって」

紅茶を松坂さんの前に置くと私も向かい側にと座った

松坂「いえ…」

　
言葉が上手く見つからずに沈黙が気まずくて

松坂「「あの！！」」

それを破るように同時に出た言葉

「す、すみません」
　

松坂「いえ………Aさんからどうぞ？」

「えっと…あっ、これをイギリスに行く前にお返ししたくて」

そう言って松坂さんの前に出したのは借りていた本

「すごく面白かったです」
松坂「ちょ、ちょっとまって」

お礼を言おうとしたら松坂さんは何故かとても焦って私の言葉を遮った

「え？」

松坂「イギリスって？」

「オーナーがイギリスに新しいお店を出す事になって、そのお手伝いに」

松坂「ずっと…ですか？」

「いえ、半年間」

松坂「半年間……彼とは？」