227.優しい光 ページ18
でも
忘れてた
オーナーが近くに居すぎて
光はその中にいると明るい事に目がなれてしまうって…
私がオーナーの仕立てたスーツを初めて見たときに感じた思いを
それを思い出したのがオーナーと離れてっていうのも何だか納得してしまう
オーナーは一番近くて遠い人
櫻井「…きっと月のような存在なのかな」
櫻井さんは窓ガラス越しに見える夜空に浮かぶ細い月を見ていた
「月？」
意図することがわからない私にふっと抜けるように笑う櫻井さん
櫻井「電気なんてない時代…真っ暗な夜道を照らし導いてくれたのはあの月明かりでしょ？」
「はい」
櫻井「けして、月そのものに辿り着きたいわけじゃない」
確かに月は美しく行けるものなら行きたいのかもしれないけど
誰もがそこは自分のたどり着く場所ではないとわかっている
櫻井「見上げたらいつも変わらずそこにいて、優しく導いてくれる」
太陽のように眩しかったら
きっと道に迷ってしまう
だけど暗闇に
確かにその場所を照らしてくれる
優しい光は
オーナーの優しさに重なった
櫻井「って俺、何いっちゃってんだろ、恥ずかしいっ」
急に頬を真っ赤にさせる櫻井さん
「櫻井さんってロマンチストなんですね」(笑)
私は櫻井さんもあの月のように遠く優しい存在に思えます
笑う私に更に耳まで赤くする櫻井さんに疲れもスーっととれるような気がした
櫻井「でも、よくわかりますよ」
「え？」
櫻井「僕にとっての二宮社長がそうですから」
そう言って二人で見上げた細い月
二宮さんは私には月より近づいたら身を焦がしてしまう太陽かもしれない
櫻井「来週はいよいよオープニングパーティーですね」
いつも家の前まで紳士的に送ってくれる櫻井さん
タクシーから降りて見送るまでは知っていたけど
必ず私が部屋に入るまで見届けてくれてるのを知ったのはつい最近の事だった
「はい、櫻井さんは来週まではこちらにいらっしゃるんですよね？」
櫻井「勿論です」
「何から何まで、本当にすみません」
櫻井「いえ、それが僕の仕事なので」
「当日は本当に何もお手伝いしなくていいんですか？」
櫻井「Aさんは当日は大野さんのサポートで忙しいですし、それまでは帰国準備もありますからそちらに専念してください」
"帰国"っという言葉
「すみません」
何度聞いても泣きそうで
櫻井「社長が喜びますから」(笑)
櫻井さんはそれに気づいたように優しく笑った
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作者名：2-38
| 作成日時：2019年9月22日 9時
