195.美しき野心家 ページ15
櫻井「赤と黒ですか？」
キッチンのカウンターのスツールに座り松坂さんに借りた本を読んでいる私に
「はい、読み始めたらとまらなくて」
二宮さんと仕事の話があると来ていた櫻井さんがリビングからこちらにいつの間にか来ていた
櫻井「因果応報とはよく言ったものですね」(笑)
「え？」
二宮「翔ちゃん」
続いてこちらにきた二宮さんは私の隣のスツールに座ると何故か嫌そうな声に櫻井さんをしかめっ面に見た
櫻井「"美しき野心家""ジュリアンソレルのようなやつ"っと言えば"一見大人しそうに見えるけど実は激しい野心と燃えるような情熱を内に秘めた若者"っという意味で使うんですよ」
流石櫻井さん色々知ってるな
っとぐらいにしか思わない私に櫻井さんは何故か悪戯っ子のように楽しそうに瞳を歪めると
櫻井「ね、ジュリアン？」(笑)
二宮さんに向かってそう呼んだ
「え…えっえっ！？二宮さん！？」
櫻井「社長が若い頃よくそう言われてたなって」
二宮「いいから翔ちゃん」
ジュリアンは華奢で少女のような見た目に反して
明晰な頭脳と博学
二宮さんと重なる部分は多いけど野心家？っというイメージはあまりない
それも二宮さんを昔から知る櫻井さんだからこそな情報で
昔の二宮さんはこのお話の主人公のような人だったんだろうか
二宮「まだ読んでるの？」
ベッドのヘッドレストに腰をかけるように座っている私の横にお風呂上がりの香りをみにまとった二宮さんがスプリングを弾ませ座る
「二宮さん、お疲れ様です」
濡れたままの髪がまた妙に色っぽく目のやり場に困る
二宮「Aちゃんが文学少女だったとはね」
ヒョイっと私の手から本をとった二宮さんは興味無さげにそれをペラペラとめくる
「いえ、本はそんなに読まないんですけど…」
二宮「けど？」
主人公が二宮さんに重なったら先が余計に気になってなんて言えない
「…面白くて」
二宮「ふーん」
興味がないような返事は想定内
「二宮さんはおすすめなお話ありますか？」
二宮「あまり興味ないね」(笑)
二宮さんと文学はイコールにはならない
松坂さんから借りた本をサイドボードに置くと
二宮「あえて言うなら」
急に覗きこまれた顔に心臓が止まる
沈黙に
「あ……えて言うなら？」
たえれない私に
彼は綺麗に口角を持ち上げると
上唇がさらに薄くなって
その綺麗な唇のかたちに魅せられる私
彼はそれをわかったかのようにゆっくりと唇を開いた
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作者名：2-38
| 作成日時：2019年8月8日 7時
