34.まだ見ぬ虹に【side NINO】←1/20 ページ4
あの日の光景が
仕事が一段落する度に脳裏によみがえった
彼女に会いに行った夜
彼女が居るとわかっていたのに
あのドアを開ける事が出来なかった
小さな店内にあのオーナーと向かい合うように立っていた彼女の顔は俺には見えなかった
ただ、背中からも伝わる彼女の視線の先にいるであろう相手への絶対的な信頼感
それは
あのオーナーが一目見て彼女を大切にしているのがわかるそんな眼差しで彼女を見つめ
俺の触れた事のない彼女の頬に指を滑らせていたからだ
Aちゃんが何とも思っていない相手にあんなにも隙をみせる訳がない
二人の関係を考えるだけで吐き気がした
口実をつけて会いに行きたい
だけどまたあんな光景を見せられたら…
昔、母さんが言ってた言葉が不意に頭の奥を揺らした
"虹を見たければ雨は我慢しなきゃ…"
笑うためには涙をのめって事なんだろうけど
この歳になって負ける勝負をするほど熱くもなれない自分がいた
彼女に決まった人がいるならそれが答えなんだって…
デスクチェアを回転させ
立ち上がると
目の前には都心の光景がおもちゃ箱をひっくり返したように見えた
小さなノック
「はい」
開かれたドアに頭を下げた翔ちゃん
櫻井「中嶋会長の秘書の方がお見えです」
翔ちゃんはAちゃんの事をどう思っているんだろうか
「通して」
馬鹿馬鹿し
そんな事考えてどうなるんだ
須永「失礼します」
小さなため息を吐き捨てると彼女の事を忘れるために仕事に頭を切り替えた
「須永さんもお忙しいのにわざわざすみませんでした」
出した資料を手早くまとめる須永さん
手入れのされた身体のパーツ
嫌味のない化粧
洗練された質のいい洋服
センスのいい道具達
きっと誰が見ても彼女は"いい女"なんだろう…
須永「いえ、中嶋が早々に二宮社長へお渡ししたいということでしたのでこちらこそご無理を言ってしまい申し訳ありませんでした」
だけど
「いえ、おかげで次の商談も上手くいきそうです…帰りはタクシーなら今呼びますよ？」
今夜一緒に食事をしたいと思うのは彼女ではなく
Aちゃんで
須永「ありがとうございます、ですが今日はこのまま直帰なので」
こういう直感は大概外れる事はなく
きっと彼女は俺の誘いを待っていただろう
「そうですか、中嶋会長によろしくお伝えください」
そんな彼女を背に
デスクにある電話の秘書室へ繋ぐボタンを押す
「須永さんがお帰りだ、下までお送りして」
35.いい男×いい女=勘違いの方程式【side NINO】→←33.手離せない想い←1/17
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2765人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：2-38
| 作成日時：2018年1月16日 10時
