彼女のルージュを落とす時１ (ページ32)

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31.ルージュを落とす時ページ32

動かず

そして動けない

「あっ…あの…二宮さん？」

クイっと顔だけこちらを向いたから急に間近に見えた彼の顔に心臓が飛びはねる

二宮「いや、こっちの話、でもさ、Aちゃん」

少し気だるそうに笑うと

「はい」

私の耳もとに唇を不意によせた彼の

二宮「脱がせるのは貴女の特権だけど？」(笑)

その一言に鼓動と一緒に上がる熱

「にっ」

急に指先に止められた唇

二宮「あと、もう一つ」

そして支配的な視線に声

「っ…」

誘い込む視線は何処までも強かで

「"和也さん"」

彼が望むその呼び方に満足そうに微笑む二宮さん

二宮「それじゃ、その特権じゅうぶんに使ってもらいにいこうか」(笑)

私のウエストに通した彼の手が

ドアノブをゆっくりと回した

後退り脚に部屋に入ると

後ろ手に彼は器用にドアに鍵をかけた

アスコットタイにかけた指先

静かな部屋と遠くの喧騒に

甘美な衣擦れの音が響く

彼はそれを私の手首にゆるやかに巻き付けると

左の口角を持ち上げ妖艶に笑う

「和也さん」

耳によせられた唇が耳たぶを甘く噛み

二宮「ん？」

返事をする彼の低い声が鼓膜を揺さぶると全身がゾクゾクする

「これじゃ、私の特権が行使できない…」

二宮「言われて見れば」(笑)

眉潜め笑う彼

二宮「これから一週間チャンスは何度もありますよ、″奥さん″？」

囁くような声に彼は背中にある小さなクルミボタンを容易く外していき

コルセット上になったウエストの後ろにある編み上げのリボンも難なくほどいていく

その間露になる首筋

鎖骨に幾へにもキスを落としていく彼

胸元に舌を這わせられ甘い刺激に堪えられずに漏れそうになる声をどうにか堪える

窓から漏れる柔らかな光に透けた彼の茶色の髪が綺麗で

拘束されたままの手に触れると彼は私を上目遣いに見た

王子様みたいな今日の彼と

その妖艶な表情のアンバランスさにまた身体が疼く

私のもの………って

彼の唇に自分の唇をよせると

彼は浅く笑い私の顎を捕まえた

二宮「ストップ」

止められた事に羞恥に染まるのは一瞬で

彼はまた私の熱をあげるような事を言った…

二宮「違う…落ちるから」(笑)

何の事かわからなかったけど

「…え？」

彼の視線に直ぐにそれがルージュだとわかった

二宮「舌…だして？」

彼の支配的な声と

彼というご褒美に勝てるわけもなく

従順に舌先を出すと

ルージュを落とすことなく

甘美な口づけに溺れた