【7/3完結】エンゲージリング【NINOBD】 (ページ8)

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6.7.レディーファーストページ8

櫻井「なに、どういう意味？」

こういうことって本人にどう説明するべきなのか

「櫻井さんは皆の"櫻井部長"ですから」

こう言うのが精一杯

櫻井「は？」(笑)

だけど櫻井さんは私の答えにますます迷宮入りするように笑う

「王子様に特別扱いされなくても皆にはない特権を貰ったら妬まれますから」

そう

私が櫻井さんにどう思われようとも彼のような特別な存在に近づくと嫉妬される

これが少女漫画の世界じゃなくリアルにも存在するんだから

女の世界は面倒な事ばかり

櫻井「だから今まで断ったわけ？」

「それだけが理由じゃないですよ」

二宮くんとの関係は誰にも言っていない事で

例え櫻井さんが知っていたとしても上司である櫻井さんにまさか二宮くんと交際しているからなんて言えるわけもない

「私が要領悪いからなかなかいいタイミングにお昼に出れないんです」

櫻井「…下手だな」

「え？」

櫻井「仕事は出来る癖に嘘は下手だなって」

「嘘なんか…」

櫻井「ついてない？それが一番の理由？」

問い詰めるように言葉を被せる櫻井さん

「櫻井さん？」

何か気にさわる事でも言ってしまったんだろうか

櫻井「言ってない"ソレ"が一番の理由じゃなくて？」

何故か何もかも見抜かれているような気がして

「どうしたんですか」(笑)

誤魔化すように喉に流したワインの味がわからなかった

櫻井「…悪い、ちょっと悪酔いしたかな」

「タクシー呼びますね」

逃げるようにして作り笑顔に席を立ち上がると店員さんにタクシーをお願いした

「タクシー…すみません」

結局、部下と言えど女性を残してタクシーでなんて帰れないと言った櫻井さんは

迎車タクシーに私を先に乗せた

櫻井「皆の王子様なんだろ、俺」(笑)

「それは」

櫻井「王子様らしくレディーファーストで」

茶化すように言うけど

櫻井さんは間違いなく"王子様"だ

「ありがとうございます」

櫻井「なぁ、間宮」

「はい」

櫻井「それならお前が嫌なわけじゃないんだよな？」

タクシーのハザードランプが

「え？」

何かを暗示するように点滅する

櫻井「さっきの話…」

「さっきの？」

櫻井「"特別扱い"してもいい？」

「え…」

言葉の意味を理解しようと必死に真っ白な頭で考えようとする私に

櫻井さんは優しく笑うと運転手さんにお金をわたし

櫻井「運転手さん、すみません、行ってください」

しめるドアの前に

櫻井「また明日、おやすみ」

その言葉の意味を教えるような瞳に私を見た