産んでくれてありがとう。貴女の若い時間を、幸福を奪ってごめんなさい ページ10
「おいババア!何してんだよ!」
突然のことに呆気に取られていたが素早くAを遠ざける。
傘の骨が刺さったのか、Aの首からは血が流れていた。呪霊の攻撃すら跳ね除ける体に傷を付けた、何者だ?
ババアはすっかり歪んだ傘を持ち替えてまた振り上げる。取っ手の方で殴ろうとしているらしく、タチが悪い。
「A、こっちおいで」
傑が名前を呼ぶがAは折角離したババアとの距離を縮めようと歩き出す。
鈍い音と共に血飛沫が飛び散った。
「なんでよ!?やっと、やっとこの間死亡届が受理されたのに!あの人が私のご飯に手をつけてくれたのに!お父さんがやっと私を娘として認めてくれたのに!なんで生きてるのよ!」
傘の柄がAの顬に命中する。
天与呪縛のフィジカルギフテッドに対してあまり効果のない稚拙な殴打をAは受け入れていた。
「……ごめん、なさい。ごめん、なさ、い」
Aは謝罪の言葉を呟くばかりで体を庇うことをしない。
埒が明かない。そう判断してババアとAの間に入り、無限で傘を受け止める。
「おいババア、こいつとどういう関係か知らねーけど何いきなり殴ってんの?頭やべーぞアンタ」
「そこどきなさいよ!」
「いやいや、俺ら今日くそ久々の休みなんだよ。アンタみたいなヤベー奴に構ってる時間ねぇから」
ババアの額に人差し指と中指を軽く当てる。
不可抗力、監視対象保護のための正当防衛だ。
気絶したババアを放置してAの顔を掴んで無理やり上を向かせる。
「おい」
「ごめ、なさ、ご……なさ」
「悟。今補助監督を呼んだ。ずらかるよ」
Aの手を引き走り出した傑の後を追う。
人混み遠くで救急車と警察車両のサイレンが聞こえた。誰かが通報したのだろう。
虫の気配すらない路地裏に入ってやっと一息着く。
「最悪、絶てぇ怒られんじゃん。あのくそババア」
「A、あの人知ってる人?」
「…………お……さん」
「あ?!もっとでかい声で言えよ」
「悟。ゆっくりでいいから、答えられるかい?」
「…お母さん」
「は?」
「あの人、私、の、お母さん」
「お母さんって─」
「……もう帰ろう。私、帰りたい」
「そうだね。また今度、一緒に行こう。悟もそれでいいね?」
「…あぁ」
「あー、Aの母親ね。なるほど、街であっちゃったか」
「硝子知ってたの?」
「全部知ってるって訳じゃないけど、Aのこと虐待してたクソ親だってことは知ってる」
私の通帳はお母さんに渡してください。無駄に溜まったお金で償えるとは思っていませんが慰めになることを祈ります→←生まれてごめんなさい。コレが最高の親孝行である事を願います
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ゆめ - 好きです!!もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)
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