不義の子にかけられた保険金も財産も私は権利を主張しません ページ6
「A、おはよう」
六時ちょうど、Aの部屋の扉を開ける。
真っ暗な部屋に染み付いた医薬品ではないアルコール臭は何年たったら消えるだろうか。
「硝子…おはよう」
暗闇からした声はいつもの間延びがない。プルタブを起こす様子もなく、Aは毛布にくるまって朝日から逃げた。
「珍しいな。飲まないなんて」
Aは目覚めに酒を飲む。私のタバコと同じ、手放せないものかと思っていた。
珍しい……もしかして今日は正気に近いのか？
別の意味で面倒くさくなりそうだ。
「硝子…私、なんで生きてるんだろ」
「またそれか。呪霊を祓除する為だろ」
それ以外、私もAもここで任務をこなす理由はないはずだ。
「……そっか。ははっ、早く死にたいな。楽になりたい」
譫言のように死にたい。と呟き続けるAの横たわるベットに腰かけた。
普段より話が通じそうだと考えながら煙草に火をつける。
「話くらいなら、聞くよ」
「…どうして……最初は大丈夫だったの、なんで今はダメなんだろ」
「何が」
「…生まれるだけなら良かったんだ…でも、ここまで生きたのが間違いで…小さい頃、死んでおくべきだった」
主語のない独白は煙のように消えていく。その真意をAは掴ませてすらくれない。
こいつは、誰にも素を見せようとしない。
「硝子、私が死んだら解剖して、跡形もなく消して」
「いいよ、約束な」
「ありがと…」
日曜日の午後であると言うのに思いの外やることが無い。
午前中に任務を終わらせ高専に戻ってきた俺はちょうど来ていた歌姫をからかってからAの部屋に向かっていた。
「硝子」
「五条、帰ったのか」
「代わる。歌姫がお前のこと探してた」
「A。これから五条がお前のこと見るからな」
いつもなら酒飲みと喫煙者が黙々と互いの嗜好に没頭する部屋は珍しく硝子の煙草の匂い一色で。空き缶で埋め尽くされいるはずの机の上も珍しく綺麗なままだった。
「なに、あいつ体調悪いの？」
「珍しく正気っぽい。比較的会話がまとも」
正気。硝子がつくには現実味がない嘘だ。
扉が閉まって真っ暗になった部屋の電気をつけると怠そうなAの顔が見えた。
「悟……どうしたの」
「マジだ。お前が正気なのとか初めてじゃね」
「…いつも正気だよ」
「酔っ払いの言葉なんて真に受けるかよ」
「ははっ、うん……死にたいのは本当だよ」
全ての権利を放棄します→←頭がふわふわして、余計な事を考えなくて済むから飲んでしまうんです。
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ゆめ - 好きです！！もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (
レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)
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