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「あーぁ、先手打たれたか」
小さな木造の一軒家。中は傑の残穢とAの微かな呪力が残っているだけで既に痕跡を辿れるほど残っていない。
この任務のために今日は予定は無い。となれば僕にできるのは僅かな手がかりをこれみよがしにたぬきの前に置くことだ。
「…にしても、殺風景だな」
Aは恐らく隣室の書庫の本以外持ち出していないのだろう。一つしかないお椀に簡易なコンロ。ストックしていたであろう割り箸の残りがいくつかあった。
「なんで箸…は?調味料?」
よく見れば、調理器具の他に塩胡椒、砂糖の小瓶があった。全て別人の呪力を感じる。この家屋の物全ての物品は術師が作ったものだ。
しかし、問題はそこでは無い。
「ふっ、あっはは!まじかあいつ」
いくら傑も来るとはいえ、調味料をストックする必要は無いはずだ。
あいつは一人になりたがってた、そんな奴が後処理の面倒な調味料を常備するはずがない。
思い立ったが何とか。硝子へ電話をかけると少しドスの効いた徹夜後の声が聞こえる。
「もっしもーし。生きてるー?」
「うるさい……もう少しで一区切り着きそうだったのに」
「あはは、ごめんごめん、てかさ聞いてよー」
「短く言え」
おそらく眠気がピークなのだろう。嫌に機嫌が良くない。
だが、これを聞けばすぐいつもの調子に戻るだろう。
「A、味覚戻ってるっぽい」
「…そうか、今日の任務はそれか。」
一瞬の沈黙。少し力の抜けた声に内心嬉しいのだろうと察する。
「まぁ、もうもぬけの殻だったけどね」
「何だ、嬉しくなって電話でもかけてきたのか」
それは硝子の方だろ。
「どーでしょ?呪力の残穢はあるけど術式を使った形跡はなし、なんなら僕が調査に来るまでこの家屋から何年も出てない」
「つまり?」
「Aは誰も殺してない。保護すれば、確実に僕の名前で庇護下に置ける」
「…必ず見つけろ」
「もちろん」
通話が終わり、次にすべきことを考える。
とりあえず物品の押収と、報告書の作成。終わらせてさっさと次の目当てを探させよう。
それに、まんまゆっくりしてらんないみたいだし。
「はぁ、術式使ったら山丸ごと爆破するとかどんだけ周到にしてんだか」
服のポケットを探り、コンビニの空き袋を引っ張り出す。その辺の物品を適当に詰め込み、山を後にした。
「おじゃま、します」
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ゆめ - 好きです!!もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)
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