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「分からない」
「…そっか。ごめん、意地が悪かった」
人並みになった腕を離し、私はされるがまま口端に着いたであろうものを取ってもらい礼を言った。
そのまま調理台へは戻らず私の向かいに椅子を置いて座る。
向かい合って数秒Aは口を開いた。
「でも、昔より苦しくない」
意外な言葉だった。まだお互いが高専に籍を置いていた時、一度だけ錯乱したAはしきりに「死ななきゃ」と、文字通り呪いのように吐いていたから。
「本当？」
「昔は死ぬことばっか考えてた。それが役割で、いなくなること以外で私はお母さんを幸せに出来ないって本気で思ってたよ」
「……今は」
外から鶏の甲高い声が轟く。
「自他関係なく、暴力がない生活はとっても安心する。家畜…いうかペットみたいな扱いだけど、あの子たちはお世話さえしてれば私に友好的だし……上層部や両親とは大違い」
どれだけ世話をしても愛情と妥協を持って暴力を受け止めていたのだ。この生活を経て彼女は何か得れたのだろう。いままでで一番晴れやかな顔で微笑んだ。
「殺しは嫌い。祓除も、生き物の形をした何かを握りつぶすあの感覚もその時の雑音だって」
でも、と彼女は続ける。
「傑の言う好きも、幸せも私は理解できないけど一個だけわかったこともあるんだ」
「聞いてもいい？」
「安心」
声が詰まった。
「実家も、高専に保護されたあとだって、ずっと気を張ってて、酔えもしないお酒ばっかり飲んでバカなフリしなきゃ本当に狂いそうだった」
まだ残っていた手元の皿からじゃがいもの欠片をつまみ、口へ頬張る。以前は、水と一緒に塊を飲み込んでいたのに今は咀嚼をし味を確かめて、満足そうに喉を鳴らした。
「呪術師でも呪詛師でもない。ただの人間の暮らしをありがとう傑」
「……A、私は」
「いいよ。分かってる」
全部、お見通しのようだった。
「来て、くれるんだね？」
「うん。でも、時間ちょうだい。家畜の引渡しもあるし、除草剤だって土に混ぜなきゃいけない。」
「ごめん。手配できるものは私がするから」
「今までしてもらったんだか。今度私が言うこと聞くよ」
「君は、やっぱり聰いね」
「まさか。死にたがり超えて達観しすぎただけだよ」
美しい青空、綺麗な水源に低級の呪霊達。一般的な山の景色に紛れていたが、Aはここには居られない。
補助監督の調査班がこの山に目星を定めてしまった。
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ゆめ - 好きです！！もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (
レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)
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