愛してくれる人はいませんでした。 ページ4
高専登校初日。
乾いた鉄と対称的なはずの鮮血の匂いを纏い、包帯だらけで担架に乗せられたAと、俺達は強烈な初対面を迎えた。
今と違い、酒に手を出していなかった頃。
硝子に治されて直ぐに、生気のない目で自己紹介を済ませていた顔は今も覚えている。
同時に天与呪縛の概要、俺たち三人に課された共通の任務。
AAの監視。
そんなことを、と思ったが理由はすぐに判明する。初任務で俺たちの監視の中、Aは呪霊の攻撃に自ら当たり向かう。
それだけでなく、やつは傷一つ負わずため息をついて消えゆく呪霊に幻滅の視線を送っていた。
硝子の様な反転術式も、傑みたいに華麗にいなす技術も、無限を張っていない生身の呪術師がだ。
今日の任務も呪力を刃のように飛ばす呪霊の群れを相手にAは躊躇うことなく飛び込む。
雨で視界が悪いはずが術式を振る姿に迷いはない。
「貴方は、私を殺してくれるぅ?」
知能の低い呪霊はAに向かってまた呪力の刃を飛ばした。
それを空中で受け止める身のこなしは流石特級候補。悪癖さえ無ければいつでも昇級できるだろう。
「…貴方もお母さんとお父さんと同じかぁ」
消えていく呪霊を前の言葉は聞かなかったことにして、変な気を起こす前に手を引いた。
「おい、帰んぞ」
顔を伏せたまま、棒立ちしている。聞こえなかったのかと思い雨に負けないよう更に大きな声を上げた。
「おい!聞こえてんだろ」
「…せ、あっはは、はぁ〜い」
既に待機していた補助監督の車へAを放り込み、渡されたタオルを投げ渡す。体を拭く素振りは無く、ただ窓の外を眺めていた。その頭にタオルを被せ、携帯を開く。
「悟ぅ、今日これから任務あるぅ?」
「ねぇよ」
今日は付き添いと補助で終わりだ。この後に傑と夜飯の約束をしている以外用事はない。
「良かったぁ。補助さぁん、スゥパァ。寄ってくださぁい」
「…はい」
駐車場に着くとAは直ぐに車から飛び出した。
「おい!」
「すぐ戻るよぉ?」
「上がうるせぇんだよ」
ずぶ濡れのままカートを押していたはずが、突然酒の棚の前で立ち止まる。度数の高い安価なさけを1杯に入れるAと目が合い、制服を引っ張られた。
「悟の制服さぁ、学生って分かるから離れて?」
それだけ言ってレジの列へ並んで行く。
年齢確認されろと悪態を着くが、思いとは裏腹に合計金額が告げられる。
スーツタイプの制服は会社員の帰宅時間に紛れて未成年飲酒を後押しした
頭がふわふわして、余計な事を考えなくて済むから飲んでしまうんです。→←強いて言うなら、生きてはいけなかったから
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ゆめ - 好きです!!もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)
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