うそつき ページ29
深い深い山の奥。
結界と夥しい量の樹齢に囲まれた小さな平屋で私は傑と縛りを結んだ。
屋外には田んぼと畑、飼育小屋があり、米と野菜の他に少数の家畜の世話をして生きている。
傑は死以外のもの全てを用意してくれた。
徐々に豊かになり垂れ下がり始めている稲を指で摘み、育ちを確認する。もう時期収穫かな。
そういえば、私は高専内でどういう扱いなのだろう。
「…まぁ、どうせ出られないしいっか」
全て諦めた。
死ぬことも、生きることも。自由はあの時からなかったし、尊厳も自尊も全部高専に置いてきた。
畑横の切り株に腰掛け、ふと目に入った斧を手に取る。
ずっしりしていて持ち手はなめらか。刃の部分は使い終わったあとちゃんと手入れしているから、とても眩く私の顔を反射している。
「…破滅願望者に鍬やら鉈を良くもまぁ預けられるわ」
斧を振り上げ、自分の足目掛けて振り下ろす。
金属は悲鳴をあげ、持ち手の木は折れてしまってどこかへ飛んで行った。
私はとうとう、ここまで頑丈になってしまったのだ。
前までなら自力で自傷もできたのに今では伸びた爪を切る程度のことしか出来ない。
「隠居生活ってこんな感じなのかな」
飼い殺しってこんなに穏やかでいいのだろうか
「…誰とも関わらない、米作ったり野菜作ったり動物の世話して自給自足の暮らしをして、休みの日は本を読んで過ごしたい」
言葉を反芻する呪霊を肩に乗せ、Aの言った内容を復唱させる。呪術師にも呪詛師ならないという意味だった。
まるで老後だな。
「そんなことでいいの？」
「は？」
間抜けな声に私は答える。
けど、完全に1人にはできない。自傷が無くなったとはいえ、栄養剤の点滴やサプリは定期的に摂取させなければいけないからね。
「いいよ。私の言う条件を飲めばその環境を近いうち必ず用意しようね」
「…傑とも関わりたくないんだけど」
「酷いな。名目上だけでも恋人じゃないか」
「……私の声聞こえてないくせに」
「今は聞こえてるよ」
呪霊を介してだけど。
だから、こうやって抱きしめられる。そして君も、振り払わない。知ってるよ。君は優しいから。
君が本気で振り払えば、私の腕をちぎれることも、本気で逃げようと思えば逃げれることも。
「■■■」
「うん、うん。ありがとう」
呪霊を引っ込ませてしまえば、君の言葉はもう分からない。
でも、それでいい。私が生きてるうちは君の理想を叶えてあげるから。
だから、生きてくれ
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ゆめ - 好きです！！もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (
レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)
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