一年だけでもいい ページ24
同じ匂いがした。
同類の、何かのために全てを捨てた、猿の匂い。
フィジカルギフテッド、そう孔のやつは言っていた。
「そこのガキもお前も、殺さないで置いてやる。殺して呪霊が溢れ出ても困るしな」
腹に蹴りを一発入れ、頸動脈を掴んで床に叩きつける。
粉塵が晴れた先で血の一滴も、かすり傷ひとつ着いていない身体に自嘲混じりの笑みが込み上げてきた。
「親に恵まれたな…ん?あぁ、そうだ俺がつけたんだっけ」
親に恵まれた?
なんて?私は恵まれてなんか居ない。
恵まれていたら、今頃美味しいご飯を食べれて、安心して眠れて、それで
私は、私が今までしてきたことって、一体何?
やめた、やめたんだ。踏ん切りが着いたんだよ。
お母さんは私が嫌いだった。ちがう!愛してくれてた、私の頭を、震える手で、撫でてくれた。
なんで、何に対して怯えて震えてたの?
優しくしているところを見られたらまたお父さんに殴られるから?おじいちゃんに叩かれるから?
ちがう、本当は分かってた。
私が怖かったんだ。祖母の浮気を知る前、私は事故にあった。でも私は無傷で車のボンネットは粘土の様に大破していた。
『化け物』
母の目は、呪霊を見る時と同じ目をしていた。
何が正しいの。ねぇ、だれか、誰か教えろよ。
天内理子ちゃん、貴方がくれた聖書には正解があるの?
霞んだ視界で揺れる誰かの影が見えた。貴方は私にその正解を教えてくれるの?
手を伸ばす。何も掴めない。影を追う。なにも無い。もう一度伸ばした手を誰かが掴んだ。
天
「Aっ、A!」
「すぐ、る?」
「良かった、立てる?」
頭を酷く打ったのか、Aは額を抑えてうずくまってしまった。
外傷が無いのが救いだ。硝子が居ない今は命取りになる。
「理子ちゃん、迎えに行かなきゃ」
「え?」
「聖書、分からないところ、教えてもらうの」
君も見ていたはずだ。理子ちゃんは、もう、
ふらついた足取りで薨星宮を出ていくAの後を追い、私もその場を離れた。
「傑、こいつら殺すか?」
抱えていた天内の遺体をAがよこせと言うように引っ張った。
その目は以前より暗く、光が見えない。
「丁寧に扱えよ……」
「…理子ちゃん、理子ちゃん」
あぁ、やっとこいつも普通になれそうだったのに。
また死にたがりに戻っちまうかもしれねぇな
「今の俺なら何も感じない」
「…いい。それには意味が無い。帰ろう。」
「…あぁ。おい、A行くぞ」
「………うん」
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ゆめ - 好きです!!もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)
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