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読み終わったら破って捨ててください。 ページ16

幸せな夢を見た。
お母さんとお父さんが仲良しで、おじいちゃんも二人を見守るように穏やかな顔をしていた。
家の中は三人分の食器、衣服がある。真新しい母子手帳がダイニングテーブルに置かれ、その中身は私の名前ではない。

男の子で、来年に生まれる予定らしい。
父が母を抱きしめる。祖父が母を許して、二人を称える。
そこに私の痕跡は無い。まで初めからいなかったかのように。

最低限与えられていた衣服も、紙皿も、水飲み皿も。
閉じ込められていたゲージが置かれていた場所には母が欲しがっていたドレッサーが置かれていた。

母の理想、父の願望、祖父の思い。全てが揃ったこれを叶える為に私は書類上だけでも死んでいなければいなかった。
だから、私の周りだけ黒くて家族だったはずの人たちと視線すら合わない。
だって、これは夢だから。夜蛾先生から貰った家族の近況報告に関する書類を読んだ。
母は男の子を身篭って、父は優しくなり祖父は以前と打って変わって穏やかになった。
弟ができる。という思いはなかった。
私は元々いない子で、世帯も別にされている。
安心した。母は笑って生きていけるんだ。良かった良かった。
私の未練は本当の意味で断ち切られた。母のことだけが心残りだったから。

冷たい雨の音。
呪霊の口で咀嚼されている私はそれを感じながら、涙を流した。
単独任務。はっきり言って雑魚だった。
一級相当。特級とはいえ、最初は下を相手にさせられることは予想がついていた。


「お母さん。幸せになってね」


母は、祖母とその浮気相手の子供だった。
私の叔父にあたる人物とは父親が違い、祖父は父親の違う母とその子供の私を酷く虐げた。
祖母はその真実を明かす前にがんでなくなり、当事者である浮気相手からの電話を運悪く祖父が応対し発覚。

私だけ呪力と術式を持っているのはそれが原因であるのだろう。
母は呪霊が見えるだけの一般人。私は顔も知らない祖父の遺伝か術式を持って生まれてしまった。
自然治癒力を失う代わりに得た怪力と以上なほど強靱な肉体はわたしを生かすだけ活かし、反抗はしなかった。

祖父は言った。
お前が生まれたのが悪い。婆さんが受けなかった罰を、お前は受けるために生まれたんだ。


私は罰を受けるために生まれた。最後の罰は家族の手を汚さず自分で消えること。
それが最大の親孝行であり、私の罪を洗い流す唯一の方法だ。

呪霊の腹の中で私は目を瞑る。瞼からはみ出た涙は呪霊の胃酸に解けて消えた。

︎︎ ︎︎→←硝子、ごめん、本当にごめん



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ゆめ - 好きです!!もう泣きそうになりました泣 続き待ってます (3月31日 12時) (レス) @page47 id: 11bb5a386d (このIDを非表示/違反報告)
なっちゃん - 今まで見てきた夢小説の中で一番面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2022年9月11日 0時) (レス) @page43 id: 0018f60a50 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - すごい面白いです見てて泣きそう… (2022年4月7日 2時) (レス) @page41 id: fef02b0b38 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ビーツ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年3月12日 23時

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