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じゅうはち!〜Happyend〜 ページ40

その日俺は、リリィと森を散歩していた。
「ほらリリィ、花冠だ」
「花冠」
「そうだぞ」
「……」
俺は毎日壊れたリリィと森を散歩している。
その成果なのか、どうなのか。
リリィの反応には繰り返すだけではなく、無言も加わった。
進歩か、退化か。
わからないが俺はそれを進歩だと信じる。
信じないと壊れそうだった。
「……ぁ」
「っ?!」
歩いていると、リリィが掠れた小さな声でもらす。
俺はリリィの肩を掴んで目を覗き込む。
けれど彼女の目はいつもと変わらず虚空を見ている。
仕方ないよな、と俺はリリィの向いているほうを見た。
__そこには、吹き出した風で揺れる忘れな草。
ドキッとした。
なぜならそこは俺がリリィに告白したところだからだ。
もう一度リリィを見た。
なんだかその目が泣きそうに潤んでいる気がして切なくて、狂おしいほどいとおしくなって俺は彼女の唇を奪った。
彼女はかすかに反応した。
それに嬉しくなって、笑った後、忘れな草の花畑にリリィをつれていく。
二人真ん中に並んで座る。
そこでたくさん話をした。
俺達の話、優愛の話、魔王の話__
日がくれるまで一方的に俺はリリィに話す。
明らかに変化が現れたのは、俺とリリィが大喧嘩をしたときの話をしていたとき。
時折瞬くだけだった目に、蜜色の雫が溢れたのだ。
そして、俺に抱きついて囁く。
「……泣か、ないで」
その声はやっぱり掠れていて、小さかった。
その声を聞いてさらに俺の目からは涙が溢れた。
「リリ、ィ?」
「……う、ん。リム、ル、何で、泣いて、るの?」
心が壊れた間のことは忘れているのか。それとも、ただ……
ああ、そんなことはどうでもいい。
俺は無様にも泣きながら涙に濡れた彼女を抱き締めている。
彼女の瞳は開かれている。
俺を心配そうに見つめている。
それが無性に嬉しくて泣いた。
良かった、本当に、諦めなくて良かった。
大好きな俺の愛している彼女が戻ってきた。

なにかが違えば、違ったのだろうか。
きっと違ったのだろう。
違った未来があったのだろう。
例えば、彼が諦めていたら?
例えば、彼も壊れてしまったのなら?
例えば、例えば__
喜劇的な、或いは悲劇的な結末を迎えるのかはその『例えば(ルート)』を辿ったものにしかわからないのだ。
つまり、考えても同じこと。無意味なこと、せんなきこと。
この世界には、心の壊れた妻を夫が助けたと言う事実しか残らない。
「はははっ、なんだよ、心配っ、かけやがって……!愛してる」
「……私、も」

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まっころん(プロフ) - あおさん» ありがとうございます!今は諸事情により更新を停止している状態ですが、待っていていただけると幸いです! (2020年8月6日 22時) (レス) id: e0298bbebe (このIDを非表示/違反報告)
あお - 面白いです。応援してます。 (2020年8月6日 19時) (レス) id: af729b494b (このIDを非表示/違反報告)
まっころん(プロフ) - 申し訳ありませんでした。すぐに移動させてもらいますね! (2019年9月14日 15時) (レス) id: e0298bbebe (このIDを非表示/違反報告)
ココロノオト(プロフ) - はい!すみません! (2019年9月14日 11時) (レス) id: 02837942e8 (このIDを非表示/違反報告)
グリノワ(プロフ) - あの、コメント欄で会話をされると、占いツクール自体に負担がかかるのでボードに移動してもらってもよろしいでしょうか?お楽しみのところ申し訳ありませんでした。 (2019年9月14日 11時) (レス) id: 542ea26681 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まっころん x他1人 | 作成日時:2019年6月30日 20時

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