抱き寄せて愛して 2 【緑】

56 ページ7

「おかしいですよ。だって、何も」

「好きになったのがAさんで俺は嬉しいよ」

「、何も無いのにですか？仕事も色んな人に迷惑かけてほんと何も出来ないのに

…脱ぐぐらい」

咄嗟に思ってもいないことを口に出しそうになった途端後ろから肩を掴まれてキスされた。

直ぐに離れると阿部さんは私の目元に触れて涙を拭いた。


「ほら、シャワー行っておいで？」

「…ん」

「……一つ伝えるとすれば
今この日が会社で良かったって思ってる」

「何でですか？」


「会社じゃなかったら

…怒ってたと思うし。珈琲かけた人に」


かけたって分かるの？

他の人は皆珈琲が倒れてかかったって


何も言わないで私の方を見る阿部さん


…シャワー浴びてこよう


私は黙って一度頷くとシャワーを浴びに浴室の方へ向かった。


シャワーを浴び終えて浴室から出ると男性物のシャツが置いてあった。

タオルで拭いて下着を着て

…これ

シャツを持ち出ようと思うが下着のままじゃまずい

でもこれ

どうしようと迷ったがタオルで隠してドアを少し開ける。

「あの、」

そう声を少し大きく出すと足音が聞こえた。


「？どうした」

「これ、阿部さんのシャツじゃ」

「今Aさんのホテルの人がクリーニング頼んでるんだ。

だから、その間はごめんだけど俺の着て？」

「え、阿部さんは」

「俺はホテルの部屋着着るよ」

「じゃあ、私が部屋着を着るのであの」


「…お願い。俺の着て？」


…そう言われたらどう断れば


その時扉からノックの音がした。

「すみません。ホテルの部屋着の方を」

「すみません。ありがとうございます。」

阿部さんは扉を開けると部屋着を受け取っていた。


「…Aさんの服のサイズが分からなくて」

「え、だからですか？」

「うん。だから。

それに、シャワー浴びている女の子に扉越しに聞けるわけないよ」


阿部さんはそう言うと浴室の扉を開けた。

目が合う


一応下着は着ているしタオルで隠しているけど


「着替えておいで。

俺はなんも手を出さないから」


「…はい」


扉が閉まったので1人取り残された。


クリーニング代どのくらいなのかな


それと、会社へも何も言えてないし

阿部さんのシャツに腕を通すがシャツの袖が余る


「…でか」


袖を曲げて前をしめる。


阿部さん身長あるよな

ていうか男の人のシャツってこんな感じなんだ


扉を開けてベッドの方に向かうとベッドに腰かけて阿部さんは携帯を見ていた。

57→←55

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す