抱き寄せて愛して 2 【緑】

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メールも電話も返信もなく

ただ会社には来るが話すタイミングもつくってくれない。

俺何かしたかな？

なんか嫌な事させた？いや、俺なのか？


「おーい、阿部ちゃん。佐久間ですよー」

「、なんだよびっくりした」

「びっくりって凄いイライラした表情だったからさ。

なんか、嫌な事あったの？」

「…まぁ、うん。」

「およよ。なになに？」

「…付き合ってた彼女から別れて下さい言われた」

「え、なんで？」

「なんでって…わかんない
聞いても教えてくれないし。ごめんなさいしか言わない」


佐久間はそんな俺の素っ気ない言葉を聞いてか椅子をカラカラと持って来て俺の横に座った。

「それは、隠し事ですな」

「？隠し事」

「アニメとか漫画とかであるじゃん。
ヒロインが主人公を守る為についた嘘とかね」


守る為


ボーと考えていると俺の机の目の前に誰かが来た。

「阿部ちゃん、阿部ちゃんはさ好きなんでしょ？」

「…増えた。なに？ふっか」

「阿部ちゃんはあの子の事好きなんでしょ？」

「なんで？」

「ん？んー、趣味のいい名刺入れをずっと胸ポケットに入れてるから」

「……じゃあさ、別れた後に彼氏が渡したマグカップを会社で使うと思う？」

「好きなら使うよ。阿部ちゃんの事を今でも凄く好きなら使う」

あのマグカップだってすぐに分かった。

あの日俺が渡したものを会社で使っているのを見て
モヤッてするし、あの子を離したくないって思う。


だけど、話すタイミングがない。



「……むず」


そう小さく呟くとふっかの横に乙木さんがやって来た。


「阿部先輩、来月から年度が変わるので新しいホルダーを作ってもよろしいでしょうか？」

「うん。ありがと」

そう言うとニコッと笑い席に戻る乙木さん

…なんかなぁ



「阿部」

「ん？」

「俺はあの人怪しいと思うけど」

「…佐久間？」

「ほら、悪役は近くにいるとか言うじゃん」

「……確かに、俺が別れてからよく話すね」


「阿部ちゃん。

俺が言うのもなんだけど

手を離しちゃダメだよ？」


ふっかの言葉は今の俺に足りないもので

凄く重く感じた。


今の季節は3月で春

桜が少しずつヒラヒラと咲き始めている


彼女は部署異動を希望していると聞いた。


何処に行くのかな


「手を離すな…ね」








部署異動通るのか分からないが一応出してみた。

彼が働きやすいようにするにはこうするしかないと思ったから。

私から離れた方が彼の為にもなる

そう信じてる

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