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泣いてもなんにもならない

だから


「泣いても変わらないじゃないですか」


泣くことに嫌気が出た

安室さんの方を見て答えると安室さんは私の頭に触れてきた


髪をつかむことは無く

ただ優しく撫でていた


驚いて何も言えず黙って安室さんを見ていると


「泣くことは自分の辛さを軽くしてくれますよ」


そう呟いて私の右の頬に手を当てていた


「っ、嘘つき」


そう言葉を発するのと同時に涙が溢れてきた

今になって怖い、助けてという感情がこみ上げてきた

そして、それらは流れるかのように頬を伝っていた


安室さんは少しだけ優しい笑みを浮かべながら右側の頬から手を離して私を前から抱きしめてきた

傷に触れないようにまるで割れ物を扱うかのように



「…俣木Aさん。

僕の…俺は降谷零です。」


そう名乗るだけで安室さんは私が泣き止むまでずっと背中をさすり抱きしめていた。





「っ痛い」

「あー、縫う程ではないけどね。ギリね

薬とか包帯とか用意するからねー」



救急外来の方で診察してもらった

診察室には私と看護師さん、そして先生に


「傷残りますかね?」

「んー、もしかしたらだけどね。

ちゃんと処置すれば治るかもしれないけどね」

「そうですか」


降谷さんがいた


体中の傷を見る時だけ背中を向けて見なかったけど


…紳士だな


口の端や腕などに絆創膏や包帯を巻かれている私は口を開くのもやっと


「いふぁい」

「あー、口の中切ってるねー。

多分ものが沁みるはず」

「…はい」


口内を見た先生は薬を処方しながらそう言っていた


…飲めない食べれないというのはきついな


そう思っていると降谷さんは私の横に来て肩にスーツのジャケットをかけてきた


「?あの」

「そのままだと出血してるのがバレる」


「しかし、それでは」

「その痛々しい傷を見せて俺が何もしないと?」

「っ、…洗って返します」

「いいよ。そこまでしなくて。


逆に元気な姿でまた来てくださいよ」



…多分はじめの言葉は降谷さんで

あとの言葉は安室さんだ



何も聞かなかった

名前は聞いたがなんの仕事なのかとか


だって

聞いたら


私はただで済まないと思ったから




家に送って行くと言った降谷さんは病院から出ると車に私を乗せて家へと向かっていた


「…」

「…俺が降谷ってことは」

「言いません。」

「…早いなぁ」


そう言うと降谷さんは笑いながらハンドルを握っていた。

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- もう見てはいらっしゃらないでしょうが、遅れて凄く素敵な作品に出会ってしまったのでコメントだけでもさせてください。途中まででもすごく楽しめました。ありがとうございました(;_;) (2021年11月22日 16時) (レス) @page36 id: 949488e612 (このIDを非表示/違反報告)
ハル春(プロフ) - ウツボカズラさん» コメントありがとうございます!返信が遅れてしまいすみません。そう言って下さりとても嬉しいです(*´∇`*)更新が遅いですがこれからもよろしくお願いします (2018年7月15日 16時) (レス) id: d930f7625b (このIDを非表示/違反報告)
ウツボカズラ(プロフ) - めちゃくちゃ降谷さんかっこいいいいいですどストライクです!!すてきな小説ありがとうございます( ;∀;)ぜひこれからもよろしくお願いします!!楽しみに読ませていただきます!!! (2018年6月3日 12時) (レス) id: ba7ef38af0 (このIDを非表示/違反報告)
ハル春(プロフ) - ○○さん» コメントありがとうございます。そして、返信が遅れてしまいすみません。イケメンに書けているのか?といつも不安だらけで書いてます。これからも更新頑張っていきますね! (2018年6月1日 0時) (レス) id: d930f7625b (このIDを非表示/違反報告)
ハル春(プロフ) - シルビアさん» コメントありがとうございます。そして、返信が遅れてしまいすみません。降谷さんイケメンに書けてますか!?凄く不安だらけです。でも凄く嬉しいお言葉です。ありがとうございます (2018年6月1日 0時) (レス) id: d930f7625b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハル春 | 作成日時:2018年4月30日 0時

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