悪戯が28回 ページ30
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そして、そういえばと彼が呟き、Aは首を傾げた。目を細め、机に肘を着いて薄く微笑む。
「君と私こそ、会った事があるんじゃあないかい?
私から深く云おうとはしない。君が忘れてるならそれでいいけれど」
Aが驚いたように目を見開き、そしてくしゃっと前髪を掴んで笑った。どこか諦めたような笑みだった。
『…ははっ…何を云うかと思ったら…Aがあの事忘れられるとか思ってた?
やっぱり、やっぱり…そうだったんだ。あの日あの場所に居たのは貴方だったんだね…
_________ダザイ幹部』
その声は震えていた。湯呑みを包む指先も、ほんの少し震えていた。何時も優しく煌めく黄金色の瞳はどこかくすんでいる。太宰を見て、力なく微笑んだ。
「…あれは、5年前だね。君のお姉さんとも会った。
____________ある貧民街で、私の元部下を拾ったたあの日に」
忘れる筈がない。
辺りに轟く銃声と、響く悲鳴。
寂れた街。ぼろぼろの服を着た少女と少年達が倒れている姿。そして、優しい口調で冷酷な言葉を発する姉。
その脳裏に嫌なほど染み付いた______嫌な過去の記憶。
『…本当は、忘れたくて仕方ない…許されない事を、Aはしたから』
「じゃあ、その過去も全て踏まえての上…君が彼の傍に居続ける理由はなんだい?」
『そんな事…ダザイ幹部なら、分かるでしょ?』
「…どうだろうね」
太宰の手元にあったグラスが、氷の落ちる音を立てた。
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君死勿 - 樋口「芥川先輩〜!?!?」←ってなってそうですね… (8月30日 13時) (レス) id: f169115c31 (このIDを非表示/違反報告)
和歌 - 素敵な作品ありがとうございます! (2022年8月17日 0時) (レス) @page1 id: 5bd59d973a (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - いえ!頑張って下さい! (2022年7月29日 12時) (レス) id: cf85aeee8c (このIDを非表示/違反報告)
しろみぃ(プロフ) - 彩さん» わーー!!ありがとうございます!!!!更新頑張らせて頂きます…!! (2022年7月29日 12時) (レス) id: 02d7799d85 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - この作品大好きです!これからも更新頑張って下さい!私の心の癒しです! (2022年7月29日 9時) (レス) @page11 id: cf85aeee8c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろみぃ* | 作成日時:2022年7月22日 22時