029:同じこと、違うこと ページ42
「向こうには、このあたりで一番大きな教会があります」
「へぇ…そうなんですか。私は教会って見たことがないですけど…大きいんでしょうね」
…少し遠くまで来た。
目の前には、大きな橋がある。
向こう岸は霞んでよく見えない。…が、大きな教会や貴族たちの屋敷があるらしく、これ以上先には行けないと聞いた。
ここの景色はとても綺麗だ。まだ帰りたくない気持ちもある、が、少しずつ肌寒くなってきた。
こちらもまだ夜になると冷えるようだ。風邪をひいてしまったら困るので、もう帰ろうとレンに声をかけた。
…彼は薄く笑い、また歩き出した。
…そして、また街に戻ろうとした時だった。
「テト！！」
「テトお姉ちゃん！！」
…そんな、声が聞こえてきた。
驚き、耳をすましてみれば、小さく誰かの呻き声のようなものも聞こえる。
それが聞こえてきたのは、薄汚い路地裏。影になって見えない部分に、誰かいるのだ。
私は、とっさにそこに駆け寄り、少し身を乗り出して、路地裏を覗き込んだ。…が、かなり奥にいるらしく、あまりよく見えない。
もう少し近付いてみようと、一歩踏み出した。
「…Aさん、どうするつもりですか？」
「レンさん…」
けれど、私の体は引き戻されていた。…後ろにいた、レンの手によって。
私はレンに顔こそ向けたが、自分が今どんな顔をしているのかわからなかった。
…何故、止めるのだろう？
彼の真意がわからず、レンの顔をじっと見つめていたが、彼もまた同じように戸惑ったような顔をしていた。
「…このような場所は、スラムが密集していて治安が悪いです。
それに、もう少しで暗くなりますし…」
「っ、でも」
「…それに、助ける理由も無いでしょう」
「っ…！！」
私は、唇を噛み締める。
レンの言っていることに間違いは無いし、きっとその言葉は、私を心配しているからこその言葉でもあるのだろう。
…だけど。
「だけど！」
「助けない理由も、無いじゃないですか…！」
そう言ったとたん、少しだけ緩んだ彼の腕を振り払い、私は薄暗い路地裏へ入っていった。
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サーシャ - アサミさん» ありがとうございます！！ しばらく更新ができなくてお返事が遅れてしまいましたが、とても感謝しています！続編でもそのイメージを崩さないよう頑張りますので、良ければよろしくお願いします。 (2017年11月6日 21時) (
レス) id: 2ec897ff99 (このIDを非表示/違反報告)
アサミ - その文章力が羨ましいです！ＫＡＩＴＯはかっこいいし、レンくんは可愛いし！続きを楽しみにしています！ (2017年10月23日 23時) (レス) id: 4b0b8ba6fb (このIDを非表示/違反報告)
水無月 - 更新お疲れ様です！もう、ヒロインちゃんに惚れました(*´ω｀*) (2017年8月26日 21時) (レス) id: 3308dd359c (このIDを非表示/違反報告)
サーシャ - めんごねんさん» ありがとうございます！ そんなふうに言って頂けると、書いていてとても楽しくなります！！ これからも、楽しいと思ってもらえる様な文章を書けるように、頑張りますね♪ (2017年7月8日 7時) (レス) id: 2ec897ff99 (このIDを非表示/違反報告)
めんごねん(プロフ) - はじめまして！( *・ω・)ノこの作品を見つけて読み始めたとき、完全に心奪われました！！文章表現がとても好きです！更新、頑張って下さいp(^-^)q！ (2017年7月4日 21時) (レス) id: 568c7ed2fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サーシャ | 作成日時：2016年9月26日 21時
