君の一番(1) ページ10
付き合うことになった彼女は、とても頼りがいのある子だった。
最初はなんだかんだいって普通のお付き合いをしていた。流行りの店に食べに行ったり、人気の多い観光地に旅行しに行ってみたり、同じ部屋で寝泊まりしてみたり。
でも、ある時ひょんなことがきっかけで僕はゴタゴタに巻き込まれた。
その時は彼女が男の僕も顔負けなくらい必死になって助けてくれたから良かったんだけど、男なのに女の子に助けられちゃったのが何だか悔しくて、僕はちょっと自身喪失してしまった。
でも、男としてすっかり自信喪失していた僕を、彼女は励ましてくれた。
あー、あの時のAかっこよかったなぁ…。
―――「どんな貴方だって愛してる」―――そう言って。
いつだって、怪我したりをミスをした時Aは僕を心配してくれた。
恋人とはいえ他人なのに、彼女はまるで自分のことのように…ううん、自分のこと以上に焦ったり、心配してくれる。
―――僕のことで面白いぐらいに振り回されてくれる彼女を見ていると、「Aにとっての一番は僕なんだ」って感じがして、最高に幸せな感じがした。
なんて彼女が愛おしんだろうと思って、僕はよく彼女を抱きしめた。
まぁ彼女はそのたびによく、「腕の力もうちょっと緩めてくれないと身長差で圧死する!」とか言ってたんだけどね。
そんなある日。僕は好奇心から、Aの目の前で態と指を怪我してみた。
のほほんとしている僕に対して、案の定彼女は血相を変えて僕に「水で洗って」、「絆創膏貼るから指出して」と言ってくる。
いつもは頼りがいがあって活発な彼女が、顔を真っ青にして心配してくる姿が愛くるしくて、とても面白かった。
だから僕はそれから暫く、頻度こそよく考えつつも彼女の前でコケたフリや怪我したフリ、辛そうなフリや眠そうなフリをしてみた。
Aはだんだんと、「仕事をやめた方がいいんじゃないか」とか、「辛いなら相談に乗るよ」とか、たくさん心配するようになっていった。
普通の人だったらここら辺で心が痛んで止めちゃうのかもしれない。でも、僕は違った。
―――彼女が僕のことを心配してくれるたびに、僕はより一層幸せだと思うようになってきていた。
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作者名:Entero-spiro | 作成日時:2019年2月13日 14時