君の一番(２) ページ11
Aは付き合っている恋人の最近の様子がおかしいと感じていた。
だがしかし、いざ相談に乗るよ、と言ってみても、当の本人は「大丈夫、Aがそう言ってくれるだけで嬉しくて元気でそう」と言って、肝心のことをはぐらかしてくるのである。
Aは「自分も何か彼の力になりたい」と思って、職場の同僚である男に相談を持ち掛けた。
―――「それはソイツが君に心配されたいからやっているんだ。」
―――同僚からかけられた言葉にAは驚き、瞠目した。
「そうなの？」と訝しみつつ、しかしよくよく彼の行動を思い出してみると、その言葉に納得せざるをえない。
自分の愛情が足りていないからなのか。もしそうでなかったとしても、不安にさせてしまっていることに対する申し訳なさ等もあって、Aは次第に罪悪感を募らせていった。
一方、BroooockはAが次第にやつれていってることに気づいていた。
しかしそれでも自分の前で気丈に振舞おうとするAが愛おしくて、彼は敢えてその行為をやめるようなことはしなかった。
―――それが結局、彼女が他の男に付け入られてしまうとは知らずに。
楽しみで仕方なかったはずのデートの当日。Aは約束の時間に来なかった。
待ち合わせは己の家。Broooockは怪訝に思って彼女に電話を掛けた。
そして―――電話はコールもなく切れた。現在通話中です、という声と共に。
初めに思ったのは、どうして、だった。
どうして来ないの。どうして来れないなら言ってくれないの。僕を差し置いてどうしてほかの人と話してるの。
しばし呆然とした後、次第にふつふつと怒りと悲しみがこみ上げてきた。
「どうして。」―――どうして、どうして、どうして。
「僕を置いてくの…？なんで…？」
―――寂しい。温かさに満ち溢れているはずの朝日からは色が失われ、鳥の囀る声はどこか遠くの事のように聞こえてくる。
どうして…―――寂しい…―――ああ。また怪我したら、Aは心配してくれるかな。
痛くて苦しくて寂しい気持ち、知ってもらえるかな。
ガチャリとドアが開いた。時刻は二時間ほど遅れていた。
彼女はどうやら走ってきたらしく、呼吸を乱れさせたまま靴を脱いだ。やけに静かな室内を見渡して、そうしてやっと、彼の状態に気付いたようだった。
「ご、ごめんね。遅れちゃったの連絡するの忘れててそれで―――」
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作者名：Entero-spiro | 作成日時：2019年2月13日 14時
