揺蕩う

既読のつかないメッセージ ページ10

あれから何度か送ってみた、会いたいのメッセージは返事どころかついには既読すらつかなくなった。

苦しいのに会いたくて、悲しいのに会いたくて、

ただ痛くて痛くて、しかたなかった。



どうしようもない夜は奏の腕の中で溺れて、
息をしようと小さく空気を吸い込むたび、あの日の黎くんを思い出してまた苦しくなる。




「…やっぱり、あいたい」



「ライブ、いく？」



でも、またダメになるかもしれない。
そう言ったわたしに、じゃあ今日はずっと隣にいたげる、って奏が笑った。









「でさ、そんとき嶺亜の弦がバチン！って切れちゃって…って、聞いてる？」


「あ、ごめん。何だっけ？」


結局向かってしまったライブハウス。


やっぱりベースを掻き鳴らす黎くんは世界一かっこよくて、きゅっと結ばれた唇は愛おしくて、どうしようもなく好きだと思った。




「…どした？元気ねぇーじゃん」


「そーかな？」



いつもの流れで誘われるまま来てしまった打ち上げ。

例のあの子もいるなんてこの場に来るまで知らなかったし、隣にいたげるなんて言ってた奏はやっぱりいつも通り女の子たちに囲まれてて、嘘つきめって楽しそうな背中をちょっとだけ睨み付けた


「Aさ、久しぶりに会ったらなんか痩せた？」


「痩せたかな？自分じゃわかんないや」


珍しく隣に座る今野くんはお酒が入ってるからなのか普段より随分饒舌で、いつもより口数の少ないわたしを心配してくれてるのか顔を覗き込んできたかと思ったら、ちょっとだけ眉を下げて困ったような顔をする。

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