いつでも呼んでよ ページ9
あの日黎くんとの関係がおわって、奏のあつい体温に抱かれた。
なにしてんのわたし、ほんと最低じゃん。
黎くんに送った、今日もライブお疲れ様ってメッセージは既読だけがついてて、返事が返ってくることはなかった。
「A、」
隣で掠れた声が響いて、抱き寄せられた身体。
落ち着いた?って奏の声が、優しすぎてなんだか居た堪れない気持ちになる。
「…ごめんね、奏」
「ん、腰痛い」
「ごめん…」
「嘘だよ。おいで、」
もっと、もっと、と強請ったわたしに、奏は気が済むまでずっと付き合ってくれた。
シラフで奏と身体を重ねる日がくるなんて夢にも思わなかったけど、
そんなこと気にしてられないくらいいっぱいいっぱいのわたしに、ただただ、優しく触れた奏。
ころしてよ、なんて零した言葉は奏の唇に拾われて、ただ傷口を癒すように包まれた。
「好き、だったの?」
「………ばか、だよね」
ぐらぐらと揺れる視界を覆ったのは奏の手で、
また優しく触れる唇は、大丈夫、黎くんじゃない。
「ばかじゃないよ、バカじゃない。」
「っ、…」
ぎゅっと包まれた奏の腕の中、昨日たくさん残した噛み跡が痛々しく変色してる、
「いたい?ごめんね、」
「痛いけど、俺こーいうのきらいじゃないよ」
そう言ってヘラヘラと笑った奏の手が伸びてきて、そっと親指が涙を拭う。
黎くんと違ってあったかい奏の手に、なんだか無性に安心して、
ああ、わたし生きてるんだなんて、馬鹿げたことを考えた。
「…も、むりかも」
「じゃあ無理だと思ったらさ、いつでも呼んでよ」
俺はAの友達だからさ、Aは大事な友達だからさ、
いっぱいいるうちのトクベツにしてあげる、なんて。
友達はこんなことしないでしょう?その一言は言えない。言わない。
大きな口が柔らかく口角を上げて微笑むから、やっぱり泣きたくなった。
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ぴぴ - 1番好きなお話です、完結待っています (2023年2月9日 23時) (レス) id: d9098e31de (このIDを非表示/違反報告)
なな - とても面白いので完結させていただきたいです (2022年6月15日 21時) (レス) @page39 id: 15d12ffd06 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 0さん» 飛んできていただけたなんて(; ;)まだ更新を待ってくださっている読者様がいると思うととても心強いです!!ありがとうございます(; ;)最後まで頑張りますのでどうぞお付き合い下さると嬉しいです!! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - ゆゆさん» だいぶ登場人物が増えました…。作者も完全に終わりを見失っておりますが、まだ読んでくださっているようでしたらどうぞ最後までお付き合い下さると幸いです(; ;) (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 華子さん» だいぶ前のコメントに今更お返事ですみません。嬉しいお言葉ありがとうございます(; ;)まだ読んでくださっているようでしたら最後まで頑張りますのでどうか暖かく見守っていただければと思います! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオ | 作成日時:2020年11月18日 16時