はじめましてのロックナンバー ページ4
あれはまだ二十歳になったばかりの頃だった。
いつものカフェテリア、高校からの付き合いの和田と奏にライブ行かない?なんて急に誘われて。
同じキャンパスの中で勉学に励んでたって、学部もバラバラな私たちが3人揃うのも久しぶりだねなんて、少しだけ浮かれた私はふたりの言葉にウキウキと頷いた。
今になってはあの時頷かなければよかったなんて、死ぬほど後悔することになるんだけど。
「でもなんでいきなりライブ?」
「俺らの友達がさバンドやってんの」
「そーそー。で、奏誘って来てよってチケットくれたんだけどさ、どうせならちゃんとチケット売上に貢献してやりたいじゃん?」
「だからAの分のチケット買ってきたってわけ」
「ふーん。」
正直ロックバンドなんてあんまり興味ないしな。そんなことを思いながら足を運んだ小さいライブハウスは、想像していたよりも観客がぎゅうぎゅうで、和田と奏に挟まれたまま最前列の柵を掴んだ。
「あつい。潰れそう」
「大丈夫?ここおいで、」
背の高い奏がわたしの身体を庇うように後ろから包んで、顔を覗き込んだからありがとう、って返す。
「あ、きた」
ガヤガヤとしたそこが和田の声が聞こえたと共にシンと静まり返る。
ゾロゾロとステージ上に出てきたバンドメンバーにスポットライトが降りかかると、
止んでいたはずの声が、今度は色めき立って響いた。
「どれがチケットくれた友達?」
「アレ。ベース弾いてるやつ」
始まった一曲目はアップテンポなナンバーで、盛り上がる声にかき消されないように和田にそう問いかければ、和田が指さした先には6弦のベースをぶら下げた細身の男の子。
そこからは長い長い時間のように感じた。
彼が奏でる低い重低音は、心地よい水中の中でふわふわ漂っているような気分にさせられて、
ロックバンドなんて興味なかったはずなのに、ステージ上で暴れ回るベースの彼に、気付いたらかっこいいなんて漏れた言葉。
結局最初から最後までステージ上の彼だけをただただ目で追っていた。
弦の上を軽やかに滑る指先とか、パーマのかかった癖のある髪が彼の動きに合わせて揺れるのとか、どうしようもないほど胸が疼いてしかたなかった。
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ぴぴ - 1番好きなお話です、完結待っています (2023年2月9日 23時) (レス) id: d9098e31de (このIDを非表示/違反報告)
なな - とても面白いので完結させていただきたいです (2022年6月15日 21時) (レス) @page39 id: 15d12ffd06 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 0さん» 飛んできていただけたなんて(; ;)まだ更新を待ってくださっている読者様がいると思うととても心強いです!!ありがとうございます(; ;)最後まで頑張りますのでどうぞお付き合い下さると嬉しいです!! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - ゆゆさん» だいぶ登場人物が増えました…。作者も完全に終わりを見失っておりますが、まだ読んでくださっているようでしたらどうぞ最後までお付き合い下さると幸いです(; ;) (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 華子さん» だいぶ前のコメントに今更お返事ですみません。嬉しいお言葉ありがとうございます(; ;)まだ読んでくださっているようでしたら最後まで頑張りますのでどうか暖かく見守っていただければと思います! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アオ | 作成日時:2020年11月18日 16時