会わない会えない ページ19
ずっと逃げててごめん。
今日は空いてる?
黎くんからの相変わらずさっぱりとした返事が返ってきたのは、いつぶりだっただろうか。
いつもの白黒なメッセージに、絶対いい意味なんてないこと分かってるのに。
頭の悪いわたしは、気付けばお気に入りのワンピースをクローゼットから引っ張り出て、
あー、ほんとにしんどい。
「ごめんね、Aちゃん」
「なにが、ごめんなのか…わかんないよ」
いつも会う時は、決まってあのホテルだったのに、
今日に限って女子が好きそうなお洒落なカフェを待ち合わせ場所に指定してきた彼。
アルコールすら、許してくれないんだって、ちょっとだけイライラする。
「…もう、会わない。会え、ない…」
目の前で俯く黎くんが、パーマのかかった伸びた髪を揺らして、そう言ったけど、
どうせならあのホテルの一番安い部屋で、酷くボロボロに抱き壊してくれた方が忘れられたかもしれないのに。なんて、
「ほんとに、ごめん」
「わたし、黎くんがすきだよ」
「…ごめんね。」
真っ直ぐにぶつけても、黎くんに届き切る前に消えてなくなってしまうそれは、どんなにぶつけても絶対に届くことはないんだろうなって、思う。
爪を立てた自分の太もも、いつだか寝ぼけた黎くんに火種を落とされて火傷になったそこは、もうすっかりただの薄い痕で、
こんなことなら、ずっとジクジクと痛い生傷のままでよかったのに。
「…ずるいよ、黎くん」
「そーだね。俺も、そう思う」
重たい前髪の隙間から覗いた目が、水分を含んでへらりと笑うから、
しんどくて、痛くて、あー、もうむり。
「…会わない、なんて、いわないで、っ」
「Aちゃん、」
「っだって、すきなんだもん、」
都合よくていいから、二番目でいいから、
おねがいだから、
そっと手を伸ばした先、あの日私の腕を取った黒いゴムのついた細い手首を掴んだ。
困ったように笑う黎くんに、どうしようもなく疼いてしまう心。
そんな顔しないでよ、黎くんがこんなにしたんでしょ。
527人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴぴ - 1番好きなお話です、完結待っています (2023年2月9日 23時) (レス) id: d9098e31de (このIDを非表示/違反報告)
なな - とても面白いので完結させていただきたいです (2022年6月15日 21時) (レス) @page39 id: 15d12ffd06 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 0さん» 飛んできていただけたなんて(; ;)まだ更新を待ってくださっている読者様がいると思うととても心強いです!!ありがとうございます(; ;)最後まで頑張りますのでどうぞお付き合い下さると嬉しいです!! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - ゆゆさん» だいぶ登場人物が増えました…。作者も完全に終わりを見失っておりますが、まだ読んでくださっているようでしたらどうぞ最後までお付き合い下さると幸いです(; ;) (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 華子さん» だいぶ前のコメントに今更お返事ですみません。嬉しいお言葉ありがとうございます(; ;)まだ読んでくださっているようでしたら最後まで頑張りますのでどうか暖かく見守っていただければと思います! (2021年11月4日 23時) (レス) id: eaedf0312e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アオ | 作成日時:2020年11月18日 16時